ゼウクシス(英語表記)Zeuxis

改訂新版 世界大百科事典 「ゼウクシス」の意味・わかりやすい解説

ゼウクシス
Zeuxis
生没年:前464ころ-?

ギリシア画家。小アジアのヘラクレイアに生まれ,アテナイで活躍。スキアグラフォス(陰影画家)とも呼ばれたアポロドロスApollodōros(前430-前400ころ活躍)の門下と伝えられる。徹底した写実技法を用いることにより当代の最も著名な画家となった。大プリニウスによれば,あるとき,彼が描いたブドウの房を小鳥が実物とまちがえてついばみに来た,という。古代の文献は,彼はこのほか5人の美女の最も美しい部分を集めた美女ヘレネ,神々を従えて王座に座すゼウスなどを描いたと伝える。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゼウクシス」の意味・わかりやすい解説

ゼウクシス[ヘラクレイア]
Zeuxis of Herakleia

前5世紀末~4世紀初頭にアテネで活躍したギリシアの画家。おそらく南イタリアのヘラクレイア出身。タソスのネセウス,あるいはヒメラのデモフィロスの弟子。文献のみによって知られるが,最も高名な古代ギリシアの画家の一人。アガタルコスの遠近法,アポロドロスの明暗法をさらに発展させ,迫真の写実を達成したと伝えられ,彼の描いたぶどうには小鳥が飛んできたという。大画家ポリュグノトスのエートスの表現よりも,むしろパトスの表現にすぐれていた。『神々とゼウス』『ケンタウロスの家族』『へびをつかみ殺す幼児ヘラクレス』など多くの作品を描いたが,いずれも現存しない。

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世界大百科事典(旧版)内のゼウクシスの言及

【明暗法】より

…イタリア語そのままにキアロスクーロchiaroscuro(〈明・暗〉または〈光・影〉の意)ともいう。 アルベルティは《絵画論》の中で,光(明)は白,影(暗)は黒で表され,もっともすぐれた画家は白と黒で現実感を出せると述べ,古代ギリシアのニキアスとゼウクシスをその創始者とした。ここから,今日に至るまでアカデミズムの中心思想の中に,明暗のみによる素描を絵画の骨格とする理論が残った。…

※「ゼウクシス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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