パトス(読み)ぱとす(その他表記)pathos ギリシア語

デジタル大辞泉 「パトス」の意味・読み・例文・類語

パトス(〈ギリシャ〉pathos)

アリストテレス倫理学で、欲情・怒り・恐怖・喜び・憎しみかなしみなどの快楽苦痛を伴う一時的な感情状態。情念。⇔エートス

パトス(Patos)

ブラジル北東部、パライーバ州都市州都ジョアンペソアの西約270キロメートルの盆地に位置する。綿花栽培、牧畜業が盛ん。食品加工業も発達。

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精選版 日本国語大辞典 「パトス」の意味・読み・例文・類語

パトス

  1. 〘 名詞 〙 ( [ギリシア語] pathos ) 知性(ロゴス)に対して、心の感情的な側面。激情。情熱。情念。→エートス
    1. [初出の実例]「それはロゴスとパトスをひとつの中に包むことを運命とせざるを得ない」(出典:近代文学と生活の問題(1934)〈唐木順三〉二)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「パトス」の意味・わかりやすい解説

パトス(情念)
ぱとす
pathos ギリシア語

情念、情動、衝動、情熱などと訳され、ロゴスlogosに対する。ラテン語ではpassioと訳され、近代語のpassionはそこから由来する。もともとは古代ギリシア語の「受ける」「被る」を意味する動詞のpascheinから派生した語で、その根本義は「受けた情態(受態)」である。したがって、広くは、何事であれ事物が「受けた変化状態」を意味したが、狭くは、特別に「人間の心が受けた情態」を意味する。受動性・可変性がその特徴であり、その時々の内外の状況に応じて、人間の心が陥る気分・情緒を総括する。

 理性の判断とは異なる源泉から由来するもので、「快」「苦」の情がその基本であり、古典倫理学では快・苦の情を理性の判断に従わせることが「徳」とされた。しばしば理性の命令に反抗するところから、ストア派ではパトスは病気といわれたが、それは覚醒(かくせい)的意識よりも意識下の根源衝動に関係づけられるものであり、人間存在の置かれている(表層的、ないし根源的)存在状況を代表するものとして、むしろ人間存在の根源性を開示するものといえる。

[加藤信朗]


パトス(ブラジル)
ぱとす
Patos

ブラジル北東部、パライーバ州中部の都市。大西洋岸にある州都ジョアン・ペソアの西250キロメートル、ピラニャス川上流の標高245メートルの内陸盆地に位置する。人口9万1761(2000)。綿花の集荷地として発展し、8~11月のワタの収穫期には多数のバイヤーが集まる。綿花の加工、オイチシカとよばれる油料種子の搾油(ワックス原料)、ウシ、ヤギの取引も盛んである。

[山本正三]

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改訂新版 世界大百科事典 「パトス」の意味・わかりやすい解説

パトス
pathos

〈受動的状態〉〈感情〉〈情念〉などを表すギリシア語。英語ではペーソス。人間精神の能動的・習慣的・理性的契機としてのエートスやロゴスに対比されるとともに,実体に対する属性,さらには激情や苦悩受苦受難などの意でも用いられるようになった。〈エートス〉〈情念〉〈ペーソス〉〈ロゴス〉の各項を参照されたい。
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百科事典マイペディア 「パトス」の意味・わかりやすい解説

パトス

ギリシア語で,〈受動的状態〉〈感情〉〈情念〉などの意。英語読みでペーソス。passionやpatienceとも同系で,〈受苦〉〈受難〉〈苦悩〉などを含意する。能動的・理性的契機としてのエートスやロゴスと対比され,西洋哲学主流では否定的な位置づけがなされてきた。
→関連項目ペーソス

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「パトス」の意味・わかりやすい解説

パトス
pathos

ギリシア語の動詞 paschō (動作を受ける) による中性名詞 (複数は pathē) で,あるもののなかに生じた出来事または変化をいう。アリストテレスは実体 ousiaに対して属性をパトスと呼び,トマス・アクィナスもこれにならって属性を passioとラテン語に訳している。倫理学では対象の刺激を受けて生じる感情一般をさし,特に現代では感情の高まり,激情をいう場合が多い。ペイソスと英語風に発音されるときは,特に哀愁の意味で用いられている。

パトス
Patos

ブラジル北東部,パライバ州中部の都市。州都ジョアンペッソアの西約 270kmにあり,エスピニャラス川にのぞむ。農業地帯の中心地で,綿花,豆類を中心とする農産物を集散し,製靴,綿織物,植物油などの工場がある。大西洋岸の州都から内陸に延びる鉄道,道路が通じる。人口8万 1292 (1991推計) 。

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世界大百科事典(旧版)内のパトスの言及

【情念】より

…そこで,情念がなぜ同時に〈受動〉〈受苦〉〈受難〉などを意味しうるかであるが,それを明らかにするにはどうしても語源にさかのぼることが必要である。すなわち,情念=パッションは,語源的にはギリシア語のパトスpathos,ラテン語のパッシオpassioに由来し,元来,他から〈働きかけを受けること〉を意味している。そしてそのようなありようには,いろいろな側面がある。…

【ペーソス】より

…そこはかとなく身にせまる悲しい情感のこと。英語の音をそのまま移した語で,同様のユーモア(諧謔)との対比を意識して用いられることが多い。〈哀愁〉〈哀感〉〈悲哀〉〈悲傷〉などとも訳される。語源はギリシア語のパトスpathosにあり,パトスとは〈何かされる〉という受身のあり方を本義として,ここから受難や被害の意を経て,激しい感情に襲われた心の情動や情念,ひいては苦悩を意味するまでになっている。同じギリシア語のエトスethos,ēthos(習慣,性格)やロゴスlogos(言葉,理性)が人間精神の能動的・理性的で持続的な側面をあらわすのに対し,パトスは受動的・感情的で一時的な状態を語ろうとし,ここに激しさも盛り込まれるのである。…

【心】より

…知,情,意によって代表される人間の精神作用の総体,もしくはその中心にあるもの。〈精神〉と同義とされることもあるが,精神がロゴス(理性)を体現する高次の心的能力で,個人を超える意味をになうとすれば,〈心〉はパトス(情念)を体現し,より多く個人的・主観的な意味合いをもつ。もともと心という概念は未開社会で霊魂不滅の信仰とむすびついて生まれ,その延長上に,霊魂の本態をめぐるさまざまな宗教的解釈や,霊魂あるいは心が肉体のどこに宿るかといった即物的疑問を呼び起こした。…

【情念】より

…そこで,情念がなぜ同時に〈受動〉〈受苦〉〈受難〉などを意味しうるかであるが,それを明らかにするにはどうしても語源にさかのぼることが必要である。すなわち,情念=パッションは,語源的にはギリシア語のパトスpathos,ラテン語のパッシオpassioに由来し,元来,他から〈働きかけを受けること〉を意味している。そしてそのようなありようには,いろいろな側面がある。…

【ペーソス】より

…〈哀愁〉〈哀感〉〈悲哀〉〈悲傷〉などとも訳される。語源はギリシア語のパトスpathosにあり,パトスとは〈何かされる〉という受身のあり方を本義として,ここから受難や被害の意を経て,激しい感情に襲われた心の情動や情念,ひいては苦悩を意味するまでになっている。同じギリシア語のエトスethos,ēthos(習慣,性格)やロゴスlogos(言葉,理性)が人間精神の能動的・理性的で持続的な側面をあらわすのに対し,パトスは受動的・感情的で一時的な状態を語ろうとし,ここに激しさも盛り込まれるのである。…

※「パトス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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