パトス(読み)ぱとす(英語表記)Patos

日本大百科全書(ニッポニカ) 「パトス」の意味・わかりやすい解説

パトス(情念)
ぱとす
pathos ギリシア語

情念、情動、衝動、情熱などと訳され、ロゴスlogosに対する。ラテン語ではpassioと訳され、近代語のpassionはそこから由来する。もともとは古代ギリシア語の「受ける」「被る」を意味する動詞のpascheinから派生した語で、その根本義は「受けた情態(受態)」である。したがって、広くは、何事であれ事物が「受けた変化状態」を意味したが、狭くは、特別に「人間の心が受けた情態」を意味する。受動性・可変性がその特徴であり、その時々の内外の状況に応じて、人間の心が陥る気分・情緒を総括する。

 理性の判断とは異なる源泉から由来するもので、「快」「苦」の情がその基本であり、古典倫理学では快・苦の情を理性の判断に従わせることが「徳」とされた。しばしば理性の命令に反抗するところから、ストア派ではパトスは病気といわれたが、それは覚醒(かくせい)的意識よりも意識下の根源衝動に関係づけられるものであり、人間存在の置かれている(表層的、ないし根源的)存在状況を代表するものとして、むしろ人間存在の根源性を開示するものといえる。

[加藤信朗]


パトス(ブラジル)
ぱとす
Patos

ブラジル北東部、パライーバ州中部の都市。大西洋岸にある州都ジョアン・ペソアの西250キロメートル、ピラニャス川上流の標高245メートルの内陸盆地に位置する。人口9万1761(2000)。綿花の集荷地として発展し、8~11月のワタ収穫期には多数のバイヤーが集まる。綿花の加工、オイチシカとよばれる油料種子の搾油(ワックス原料)、ウシヤギの取引も盛んである。

[山本正三]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「パトス」の意味・わかりやすい解説

パトス
pathos

ギリシア語の動詞 paschō (動作を受ける) による中性名詞 (複数は pathē) で,あるもののなかに生じた出来事または変化をいう。アリストテレスは実体 ousiaに対して属性をパトスと呼び,トマス・アクィナスもこれにならって属性を passioとラテン語に訳している。倫理学では対象の刺激を受けて生じる感情一般をさし,特に現代では感情の高まり,激情をいう場合が多い。ペイソスと英語風に発音されるときは,特に哀愁の意味で用いられている。

パトス
Patos

ブラジル北東部,パライバ州中部の都市。州都ジョアンペッソアの西約 270kmにあり,エスピニャラス川にのぞむ。農業地帯の中心地で,綿花,豆類を中心とする農産物を集散し,製靴,綿織物,植物油などの工場がある。大西洋岸の州都から内陸に延びる鉄道,道路が通じる。人口8万 1292 (1991推計) 。

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