たたら師(読み)たたらし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「たたら師」の意味・わかりやすい解説

たたら師
たたらし

たたら踏鞴・高殿)炉で砂鉄の精錬作業をする職人。古代・中世には、特殊の職能集団として移動・漂泊していた。近世に入り1770年代から、それまでの露天の野(の)だたらにかわって、屋内に構築されたたたら炉が砂鉄産地に普及していった。これには鉄師(鉄山師)の管理下にたたら職人が置かれた。鉄師のことをたたら親方ともいい、たたら職人には村下(むらげ)(職長)、炭坂(すみさか)(炭の吟味役・職長補佐)、炭焚(すみたき)、番子(ばんこ)(天秤吹子(てんびんふいご)を踏む者)などの職階があり、これらを俗にたたら師といったものであろう。いつごろからの称呼かはわからない。たたら炉構築の技術者とも考えられるが、はっきりしていない。

遠藤元男

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「たたら師」の意味・わかりやすい解説

たたら師
たたらし

砂鉄を集め,ふいごを利用して製鉄を営む者をいう。かつては日本各地の砂鉄のとれる谷川沿いを移動して生活を営んでいたが,室町時代頃から定住するようになり,採鉱,冶金炭焼きなどの分業組織をもつ職業集団を形成した。金屋子神を彼らの祖神として尊崇し,特に女性の赤不浄を非常に忌み,月経中,あるいは出産直後の女性を仕事場には絶対に入れないなどの禁忌が厳重であった (→産の忌 ) 。中国地方の山間部,島根県奥出雲町などに現存する。

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世界大百科事典(旧版)内のたたら師の言及

【たたら(鑪∥踏鞴)】より

…それがしだいに高殿と記される炉をもった作業施設がつくられ,定着するようになった。たたらを中心とする山内(さんない)にはたたら師,鍛冶師,炭焼きなどが住み,経営者との間に親方子方関係を結び山子(やまこ)として働いた。たたら師は鉱山関係者のなかでもとくに信仰や伝承が多く,かつ古いものが残されている。…

※「たたら師」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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