女性の血の忌みのこと。かつて出産の出血も、月経の出血も、ともに穢(けがれ)とみなされ、その期間中の女性は、社会的に生活を拘束されることがあった。そのためこの期間中、家族と別に生活することもあった。女性の血を穢とみる原因は、仏教の影響が強いといわれ、「女人禁制」などのことばも伝承されてきた。女性の生理期間、出産時には、当事者だけでなく、同居する家族にもその穢が及ぶとされ、とくに大工、鍛冶(かじ)、漁師などの職業者は、この穢をおそれていた。そのため本人を隔離する風があったのである。しかし他方、この隔離する小屋のタヤとかカリヤという名称は、神事の精進潔斎(しょうじんけっさい)する小屋をも意味し、月事が本来穢であったか否か問題である。南西諸島(琉球(りゅうきゅう)列島)では神事は女性の管轄下にあるが、この女性は月事のある成女である。本土では不浄とされている月事が、祭祀(さいし)参加の条件であることは、不浄とされていた月事が、他面もっとも聖なることであったことを意味するものである。
[鎌田久子]
『牧田茂著『神と女の民俗学』(講談社現代新書)』▽『瀬川清子著『女の民俗誌』(1980・東京書籍・東書選書)』
…死や葬儀関係のことを穢れとして黒不浄といって一般に嫌うが,一方では海上で海難者を見つけると必ず拾い上げて丁重に葬り,葬式に用いたものを豊漁の縁起物として歓迎する心意がみられる。出産や月経は赤不浄として徹底的に忌む。漁民の山アテ(沖で漁場を確定するため山を見て位置を知る)の対象になる山に寄せる信仰は強く,山形県善宝寺,宮城県金華山,志摩半島の青峰山などはその代表的な対象となっている。…
…記紀神話において男神伊弉諾(いざなき)が冥界で汚染した死穢を禊祓によって心身を浄化しつつアマテラス等の三貴子を産むのは女神伊弉冉(いざなみ)の死穢を契機にして生命の新しい秩序を実現したことを示す。習俗的には死穢を黒不浄,血穢を赤不浄ともいうが,赤不浄として女性の出産や月経を穢とするのも,血を忌むと斎むとの両義性の底に生命誕生の神秘を聖別すればこそであった。いわば個体生命の危機を穢と観念することが逆に全体生命の新生への契機となる。…
…経血が強い力をもつという信仰は,たとえばアイヌが痘瘡(とうそう)の上にそれを塗る治療法などにもみられる。【波平 恵美子】
【月経の民俗】
日本では〈月のもの〉〈月やく〉〈よごれ〉〈赤不浄〉〈血忌み〉〈ベッカ〉などともいう。初潮は女の子の性的変化の大きなもので,それをハツハナ(初花)といって,赤飯を炊き,赤い腰巻をおくって祝う風があった。…
※「赤不浄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...
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