砂鉄(読み)サテツ

デジタル大辞泉 「砂鉄」の意味・読み・例文・類語

さ‐てつ【砂鉄】

岩石中の磁鉄鉱チタン鉄鉱などが岩石の崩壊によって流され、河床湖底海底などに堆積たいせきしたもの。鉄・チタンの原料。しゃてつ。
[類語]くろがね鉄材鉄分鋼鉄鉄鋼こうはがねスチールステンレス鋳鉄銑鉄屑鉄

しゃ‐てつ【砂鉄】

さてつ(砂鉄)

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精選版 日本国語大辞典 「砂鉄」の意味・読み・例文・類語

さ‐てつ【砂鉄】

  1. 〘 名詞 〙 岩石から分離し、川や海の底に砂や小石とともに堆積(たいせき)した磁鉄鉱。以前は「たたら吹き」より鉄を製したが、現在は鉄およびチタンなどの原料。しゃてつ。〔重訂本草綱目啓蒙(1847)〕

しゃ‐てつ【砂鉄】

  1. 〘 名詞 〙 岩石から分離し川や海の底に砂や小石とともに堆積(たいせき)した磁鉄鉱。さてつ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「砂鉄」の意味・わかりやすい解説

砂鉄
さてつ
iron sand

堆積(たいせき)層中に分布する鉄鉱物。鉄鉱物の供給源はおもに花崗(かこう)岩や安山岩などの火成岩類である。これら源岩が風化作用を受け分解され、鉱物粒子や破片、それに化学成分などが河川水の作用により運搬される。岩石中に副成分として含まれる磁鉄鉱やチタン鉄鉱は、風化に対して化学的抵抗性も機械的耐久性も強く、硬度および密度も高い。河川水による流水運搬の過程で、磁鉄鉱やチタン鉄鉱は密度も粒子の大きさも違うほかの鉱物や岩片から選別され、砂鉄として堆積物中に沈積、濃集する。砂鉄は洪積砂鉄、沖積砂鉄、海浜(かいひん)砂鉄に分けられる。洪積砂鉄は風化を受けた場所からあまり遠くない山の斜面などに堆積したもので、一般に規模は小さい。川床などに堆積したものは沖積砂鉄とよばれる。海岸で波により淘汰(とうた)された砂鉄は海浜砂鉄とよばれ、分布規模が大きい。北海道内浦湾(噴火湾)沿岸、青森県東海岸、九州有明(ありあけ)海などの砂鉄は、安山岩質火山岩を源岩とし、チタン鉄鉱を伴う。山陰地方の山腹に分布する砂鉄は、中国地方の花崗岩類を源岩とするもので、チタンやバナジウムなどの不純物は少ない。砂鉄は昔の「たたら吹き」製鉄の原料であった。チタン鉄鉱の多い砂鉄はチタン原料となる。砂錫(さすず)や砂金なども砂鉄と同様な作用でできたものであるが、砂鉱を形成する重要な条件として、風化に対し安定で、比重が大きい鉱物であることがあげられる。

[武内寿久祢・金田博彰]

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改訂新版 世界大百科事典 「砂鉄」の意味・わかりやすい解説

砂鉄 (さてつ)
iron-sand

火成岩中に1~2%含まれている鉄鉱物が,岩石の風化によって分離し,現地で多少濃集するか,もしくは河川などによって運ばれ集積したものをいう。前者を山砂鉄,後者を集積した場所によって川砂鉄海岸砂鉄海底砂鉄と呼ぶ。砂鉄は主として磁鉄鉱からなり,少量のチタン鉄鉱,赤鉄鉱を含むが,主としてチタン鉄鉱からなるものはとくにチタン砂鉄と呼ばれる。昔から良質な砂鉄産地として著名な出雲地方の山砂鉄は花コウ岩類を原岩とするもので,チタン,リン,硫黄の含有量が少ない。川砂鉄,海岸砂鉄は日本各地に分布しているが,北海道内浦湾沿岸,青森県三沢~八戸海岸の海岸砂鉄が著名。砂鉄はかつて重要な鉄鉱石であったが,近代製鉄業が発達した後は,第2次大戦中と大戦後の一時期以外,ほとんど利用されていない。また世界でもアルゼンチンニュージーランド,チリ,カナダなど各地に分布しているが,ほとんど利用されていない。
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百科事典マイペディア 「砂鉄」の意味・わかりやすい解説

砂鉄【さてつ】

岩石中の鉄鉱物が風化によって分離,原地に,また流水などに運搬されて別の場所に堆積したもの。生成場所により山砂鉄,川砂鉄,浜砂鉄,海底砂鉄などと呼ぶ。鉄鉱物は磁鉄鉱を主とし赤鉄鉱,褐鉄鉱,チタン鉄鉱などからなる。日本では北海道内浦湾,青森,岩手,千葉などに産し,チタン分が比較的高いので,鉄鉱石およびチタン鉱石として利用。なお古くから山陰,特に出雲などで山砂鉄を用いたたたらによる製鉄が行われてきた。
→関連項目砂鉱床磁鉄鉱鉄鉱床鉄鉱石

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化学辞典 第2版 「砂鉄」の解説

砂鉄
サテツ
magnetite sand

含チタン磁鉄鉱が風化して砂状となったものである.風化してそのまま地表を覆ったものを原成砂鉄,風によって運搬されたのち,堆積したものを風成砂鉄,水により運搬されたのち,堆積したものを水成砂鉄とよぶ.水成砂鉄は堆積した場所によって,川砂鉄,湖岸砂鉄,浜砂鉄とよぶ.堆積後,地殻の沈降,隆起などをうけたもので段丘を覆うものを段丘砂鉄,山地の地層中にはさまれたものを山砂鉄とよび,また,波打ぎわの砂鉄を打上げ砂鉄とよぶ.なお,砂鉄を小鉄(こがね)とよぶ地方がある.砂鉄の成分は産地によって異なるが,主成分はマグネタイトFe3O4,ヘマタイトFe2O3,チタニアTiO2で,これらの酸化物が固溶体あるいは微細な溶離組織をつくっている.主成分がマグネタイトのため磁性を有している.砂鉄は還元されにくいので,直接製鉄法の原料とする以外にはほとんど使用されていない.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「砂鉄」の意味・わかりやすい解説

砂鉄
さてつ
iron sand

細粒状の鉄鉱石。磁鉄鉱,赤鉄鉱,チタン鉄鉱などが風化作用を受けて生成したものとされ,山,河川,海浜などに堆積して存在し,それぞれ山砂鉄,川砂鉄,浜砂鉄と通称される。日本では各地に産出し,古来,たたら製鉄 (→たたらぶき ) の原料とされ,刀剣,包丁,鋳物などを製造した。明治時代,洋式製鉄法が導入されて以後,輸入鉄鉱石が多くなり,国産の砂鉄の比重は低下した。砂鉄はイルミナイト (含チタン鉄鉱) と共存しているので,最近では製鉄原料としてではなく,チタン原料資源となっている。

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普及版 字通 「砂鉄」の読み・字形・画数・意味

【砂鉄】さてつ

粒鉄。

字通「砂」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の砂鉄の言及

【日本刀】より

…そのほか梵字,天照皇大神や春日大明神などの神号,あるいは八幡大菩薩や南無摩利支天などの仏号を文字で刻したものもある。
【材料】
 日本刀の材料である鉄は砂鉄を精製したものであって,砂鉄は日本のいたるところに産するが,なかでも中国山地のものが良質である。それは花コウ岩などの中に磁鉄鉱の形で含まれている。…

※「砂鉄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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