日本大百科全書(ニッポニカ) 「タットン塩」の意味・わかりやすい解説
タットン塩
たっとんえん
Tutton's salt
硫酸マグネシウムアンモニウム六水和物(NH4)2Mg(SO4)2・6H2Oをいう。ミョウバンとともに複塩の代表的な例である。ただし実際には[Mg(H2O)6]SO4・(NH4)2SO4のような構造をもつ。これと構造の似た多くの同形結晶が知られている。たとえば、M2M(SO4)2・6H2OのM=K,(NH4),Rb,Cs,Tl、M=Mg,Zn,Cd,Mn,Fe,Co,Niなどが多く知られ、またSO42-のかわりにSeO42-,BeF42-などのものも知られている。いずれも同じ結晶形で、構造が同じなので、それらの間での完全な混晶も知られている。なお、名称は、イギリスのタットンAlfred Edwin Howard Tutton(1864―1938)が、この種の塩の研究を行ったのに由来する。またこのうち(NH4)2Fe(SO4)2・6H2Oはモール塩とよばれ、空気中で風解しにくく、鉄(Ⅱ)塩としては比較的安定なので鉄(Ⅱ)の標準溶液をつくるのに用いられる。
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