硫酸マグネシウム(読み)りゅうさんマグネシウム(英語表記)magnesium sulfate

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「硫酸マグネシウム」の意味・わかりやすい解説

硫酸マグネシウム
りゅうさんマグネシウム
magnesium sulfate

化学式 MgSO4 。無水塩のほかに,1,2,3,4,5,6,7および 12水和物がある。普通は7水和物で存在する。シャリ塩,エプソム塩ともいう。天然にはドイツのシュタスフルトの岩塩層中に1水和物が硫酸苦土石 (キーゼル石) として発見され,また KCl ・ MgSO4 ・ 3H2O (カイナイト) ,K2SO4 ・ 2MgSO4 (ラングバイン石) ,Na2SO4 ・ MgSO4 ・ 4H2O (ブレード石) などとして産する。工業的には海水から,またはカリ工業の副産物として製造する。無色結晶で,味は苦く,清涼みおよび辛みがある。 1gは水 1.5mlまたは熱湯 0.2mlに溶け,グリセリン 1mlに徐々に溶け,エチルアルコールに溶けにくい。無水塩の融点 1185℃,7水塩は 68℃以上で結晶水に溶ける。紙の充填剤,絹の増量剤,耐火綿布の製造,媒染剤として使用。医薬としては主要な塩類下剤であり,さらにバリウムやバルビタール中毒の解毒剤,胆汁採取時の胆嚢収縮剤,破傷風時の抗けいれん薬などとしても用いられる。腎臓からすみやかに排泄されるが,腎不全の場合にはマグネシウム中毒を起す。特に非経口的に多量投与した場合,全身熱感,血圧下降,心機能抑制,中枢神経抑制などが生じることがある。治療には 10%グルコン酸カルシウムの静脈注射をする。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「硫酸マグネシウム」の意味・わかりやすい解説

硫酸マグネシウム
りゅうさんまぐねしうむ
magnesium sulfate

マグネシウムの硫酸塩。無水和物のほか、一、二、四、五、六、七および12水和物がある。通常は七水和物をさし、シャリ塩、エプソム塩などの名がある。天然にはキーゼライトとして一水和物の形で産出する。工業的にはキーゼライトの熱水による再結晶、苦汁にがり)、天然鹹水(かんすい)、カリ工業廃液などからの分別結晶で得られる。飽和水溶液からの晶出温度によって水和状態が異なってくる。1.8℃から48.1℃の間で七水和物が得られる。無色の四角柱状結晶。風解性。エタノール(エチルアルコール)に可溶。水和物を赤熱脱水すると無水和物(白色結晶状粉末)が得られる。紙の充填(じゅうてん)剤、媒染剤のほか医薬品としても用いられる。

[鳥居泰男]


硫酸マグネシウム(データノート)
りゅうさんまぐねしうむでーたのーと

硫酸マグネシウム
硫酸マグネシウム七水和物
  MgSO4・7H2O
 式量  246.5
 融点  67.5℃
 沸点  ―
 比重  1.68
 結晶系 斜方
 屈折率 (n) 1.4554
 溶解度 178g/100g(水40℃)

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