改訂新版 世界大百科事典 「タルターリア」の意味・わかりやすい解説
タルターリア
Niccolò Tartaglia
生没年:1499か1500-57
ルネサンス期イタリアの数学者,技術者。Tartalea,Tartaliaともつづる。少年期に口に受けた傷によって,どもりを意味するイタリア語に由来するニックネーム,タルターリアを与えられた。正式の教育はほとんど受けなかったが,持ちまえの勤勉さで数学的知識をものにした。数学上の独創的業績としては,1535年の三次方程式の解の発見が第1にあげられる。その公表をめぐるG.カルダーノ,L.フェラリとの論争は大きな話題となった。ギリシア数学の古典の刊行にも尽力し,ユークリッドの《ストイケイア》の最初の近代語訳であるイタリア語版を43年に出版した。この訳書は,《ストイケイア》第5巻の一般比例論の中世的誤解を意識的に正したことで特筆される。同年,13世紀のムールベーカのギヨームによるアルキメデスのラテン語数学著作集を刊行,のちにはイタリア語訳をも刊行した(1551)。さらに,ヨルダヌスの力学的著作に関する資料を残し,のちに遺作として出版された(1565)。理論数学を機械的技術に応用する試みの《新科学》(1537)においては,砲弾がいたるところ曲線軌道を描くこと,最大射程は仰角が45度のとき得られることなどを理論的証明なしに述べている。この書物のタイトル《新科学》は,ルネサンスの高級職人たちの,新しい数学的学問創出への意気込みを示している。
執筆者:佐々木 力
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報