企業が求める人材に対して直接転職を働きかけ、採用する手法。略称DR。ダイレクトソーシングやインハウス・リクルーティングともよばれる。転職による人材の流動性に富む欧米企業では、DRが一般的な転職方法として定着しているが、これまで日本企業では、求人広告などで就職希望者を待つエントリー型や、仲介会社に依頼するヘッドハンティング型の人材募集が主であった。しかし、2014年(平成26)以降、中途採用の転職求人倍率が高まったことから、DRを導入する企業が増加した。少子高齢化に伴う労働人口の減少のため、人材獲得競争がいっそう激しくなるとみられる。
企業の人事担当部門などによるDRでは、会員制転職サイトの人材データベースを使ったり、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の情報を利用したりすることで、必要な人材を絞り込み、直接交渉に臨んでいる。人材データベースとしてはビズリーチ(日本)やリンクトインLinkedIn(アメリカ)が有名である。2009年に設立されたビズリーチは、管理職とグローバル人材に絞った人材データベースを構築し、有料で利用できるサービスを展開している。同社の登録会員数は、創業わずか6年(2015年時点)で49万人を超えた。同社以外にも、業種や職種を絞った人材データベースを構築している会社もあり、業績を伸ばしている。また、フェイスブックFacebookをはじめとするSNSは、人材データベースとともに、候補者についての情報収集から自社の情報発信、直接接触するためのツールとしても利用されている。
DRが定着しているアメリカでは、社員の友人や知人に直接働きかける方法で人材を募るケースが多く、入社後の定着率が高く注目されている。アメリカとは異なり、転職によって所得の下がるケースが多いとされる日本では、転職の希望は依然として多くはない。終身雇用や定期昇給といった企業慣行が弱まるなかで、インターネットの浸透を背景にした、DRをはじめとする人材の採用手法が定着するか注目されている。
[編集部 2016年5月19日]
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