日本大百科全書(ニッポニカ) 「ダンピング防止税」の意味・わかりやすい解説
ダンピング防止税
だんぴんぐぼうしぜい
anti-dumping duties
ダンピング防止関税、アンチ・ダンピング関税、反ダンピング関税、不当廉売(防止)関税ともいい、不当に安く輸入された商品に対し、輸入国の産業が実質的な損害を被るか、あるいはそのおそれがある場合、国内産業保護のために賦課される割増関税をいう。その割増額は正常価格とダンピング価格との差額と同額以下で、ダンピング効果を相殺するための付加税・防止税(相殺関税)となる。WTO(世界貿易機関)協定でも、ダンピングは自由貿易を阻害するものとして、ダンピング防止税を認め、一般協定第6条でダンピングの定義および課税基準などを規定している。また、ダンピング防止協定anti-dumping code(ガット第6条の実施に関する協定)を定め、乱用を防止するために、解釈・運用の国際的な統一を図っている。日本でも関税定率法第8条と「不当廉売関税に関する政令」でダンピング防止税の課税要件を規定し、ダンピングされた貨物の国内産業の利害関係者は、政府にダンピングされた貨物の輸入の事実および当該輸入の国内の産業に与える実質的な損害などの事実についての証拠をつけて提訴し、ダンピング防止税を課することを請求することができるとしている。
従来、アンチ・ダンピング制度が整備されていたアメリカやEU(ヨーロッパ連合)、カナダ、オーストラリアからの発動が多かったが、最近ではインドやブラジル、中国などの開発途上国が発動するケースも増えている。しかし、アンチ・ダンピング調査開始件数は近年減少傾向にあり、2001年の369件を最高に、2007年は164件である。日本の場合は非常に少なく、1998年から2007年の10年間で6件にすぎない。
[秋山憲治]
『池田節雄著『EUアンチ・ダンピング法 新版』(1998・日本貿易振興会)』