改訂新版 世界大百科事典 「チタン磁器」の意味・わかりやすい解説
チタン磁器 (チタンじき)
titania porcelain
酸化チタン(Ⅳ)TiO2を主成分とする磁器で,コンデンサー材料として用いられる。酸化チタンにはルチル(金紅石),アナタース(鋭錐石)およびブルッカイト(板チタン石)の三つの結晶形があるが,コンデンサー材料としては誘電率の最も大きなルチル型結晶が用いられる。ルチルは強誘電体ではないが,他の金属酸化物に比べ著しく大きな誘電率をもち,磁器とした場合ほぼ90程度の誘電率を示す。この磁器の特徴はその誘電率が負の温度係数を示し,その誘電損(tanδ)が小さいことである。誘電率の温度係数は種々の元素の添加によって適当に変えることができ,そのような磁器は温度補償用コンデンサー材料として用いられている。そのほか,TiO2とアルカリ土類酸化物との複合酸化物であるMgO・TiO2,CaO・TiO2,SrO・TiO2,BaO・TiO2などを主成分とする磁器などもコンデンサー材料として用いられる。MgO・TiO2,CaO・TiO2はその誘電損が非常に小さいので高周波用誘電体材料の成分として重要である。
執筆者:桑原 誠
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報