改訂新版 世界大百科事典 「チャンダーラ」の意味・わかりやすい解説
チャンダーラ
Caṇḍāla
古代インドにおいてその存在が穢(けが)れていると考えられていた賤民。漢訳仏典では旃陀羅(せんだら)とする。古代インド社会では賤民制が複雑に発達したが,チャンダーラはそうした社会の最下層に置かれた集団。はじめ4バルナ(種姓)中のシュードラの範疇に加えられ,のちシュードラ以下の存在とみなされるにいたった。ヒンドゥー法典ではチャンダーラの起源をシュードラ男とバラモン女の混血に求めているが,これは史実ではない。彼らは社会の一般住民に穢れを与える者とみられ,町や村の中に住むことができず,狩猟,屠殺,刑殺,清掃など〈不浄〉とみなされる各種の職業に従事することを強いられた。すなわち,4バルナから成る社会の〈浄性〉を維持するという口実のもとに,社会生活のすべての面で大きな差別を受けたのである。後世の不可触民制の起源の一つは,こうしたチャンダーラ差別にある。
→不可触民
執筆者:山崎 元一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報