改訂新版 世界大百科事典 「チャンディムンドゥット」の意味・わかりやすい解説
チャンディ・ムンドゥット
Candi Mendut
インドネシアのジャワ島中部にある仏教遺跡。ジョクジャカルタの北西約40km,ボロブドゥール遺跡の東方約3kmの地点に位置する。この地一帯に栄えていたシャイレンドラ王国(8~9世紀)の王によって造営された霊廟寺院である。建立者は一説にインドラ王とみなされ,造営年代は790-800年ころと推定されている。霊廟寺院は入口を北西に向け,高い基壇上の身舎(もや)は1辺が13.7mある。祠堂の内部には,丸彫による3体の仏像が安置されている。その中尊は釈迦牟尼仏(高さ3m)で,向かって左側の脇侍像(高さ2.5m)が観世音菩薩を表し,向かって右側の脇侍像(高さ2.5m)が金剛手菩薩とみなされる。いずれもインド美術にみる仏菩薩像のつくり方の流れをくむ傑作である。また入口の左右の側壁にはハーリティ(訶梨帝母あるいは鬼子母神)と夜叉パーンチカ,それらを取り巻く子どもたちの姿の浮彫が大きなパネル状にはめこまれている。身舎の外側の側壁には,さまざまな姿の菩薩(高さ約2m)の浮彫が残され,入口に向かって左側に歩いて回ることによって,順にこれら8体の菩薩像を拝せるようになっている。その8体は順に,虚空蔵菩薩,慈氏菩薩,除蓋障(じよげしよう)菩薩,地蔵菩薩,金剛手菩薩,曼殊室利(まんじゆしゆり)菩薩,普賢菩薩,聖観自在菩薩とみなされる。この寺院は小さな祠堂ではあるが,残された彫刻はインドネシア古典期美術の最高傑作とたたえられる。
執筆者:伊東 照司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報