改訂新版 世界大百科事典 「テサロニケ人への手紙」の意味・わかりやすい解説
テサロニケ人への手紙 (テサロニケびとへのてがみ)
Letters of Paul to the Thessalonians
パウロによる2通の手紙の総称。《第1の手紙》は,50-52年にパウロがギリシアのコリントスに滞在中,マケドニアのテサロニケ(テッサロニケ)教会にあてて書いた新約聖書中最古の文書である。テサロニケの信徒を励まし勧告する内容であるが,注目すべきことに,パウロはみずからこの世へのキリストの再臨の起こる終末の時まで生き残るという確信を表明している(4:13以下)。《第2の手紙》は《第1の手紙》の内容を受け継ぐ形で展開されているが,《第1の手紙》の持つダイナミズムが失われており,否定的な神の審判の思想が強調されて勧告の基礎づけとなるという思考が前面に出ていることなどからして,パウロの真正の手紙であることを疑問視する学者が多い。
執筆者:青野 太潮
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報