改訂新版 世界大百科事典 「ディジタル伝送」の意味・わかりやすい解説
ディジタル伝送 (ディジタルでんそう)
digital transmission
情報を〈あり〉〈なし〉の二進符号やさらに三進符号などの離散的な信号(ディジタル信号)を用いて伝達する通信の方式。情報にはディジタルコンピューターからのデータ信号のようなディジタル信号と電話のように情報をそのまま比例的に電気量に変換したアナログ信号がある。アナログ信号をディジタル的に伝送する方式としてもっとも一般的なパルス符号変調(PCM)方式は,イギリスのリーブズA.H.Reevesによって発明され(1937),アメリカのシャノンC.E.Shannonによって理論的に研究がなされた。ディジタル通信の特徴は,アナログ信号をそのまま送る場合に問題となる雑音の混入や波形のひずみがないことである。ディジタル通信方式は優れた方式であるが,初期にはディジタル信号を扱う回路素子として適切なものがなかったため実用化に至らず,トランジスターなどの半導体技術の進歩によって初めて電話信号の伝送に用いられるようになった。今日では電話局の間を結ぶ局間中継線だけでなく,人工衛星を使った衛星通信や電話局に置かれる交換機などもディジタル化されつつある。ディジタルコンピューターの著しい発展はディジタル信号を扱う集積回路技術の急激な進歩を促したため,ディジタル通信機器の集積回路化が可能となり,また,光ファイバーを用いる光通信など通信技術の進歩はディジタル信号を遠方に伝達する経済性を著しく向上させている。一方,データ通信,ファクシミリ通信などの需要の増加は著しいものがあるが,これらの信号は元来ディジタルでありディジタル通信方式との整合性がよい。このような背景のもとで,電話,データ,画像などの各種の情報をディジタル伝送路と交換機により伝達するディジタルサービス総合通信網(ISDN)の開発が進められた。
執筆者:金子 尚志
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報