ディーパバンサ(その他表記)Dīpavaṃsa

改訂新版 世界大百科事典 「ディーパバンサ」の意味・わかりやすい解説

ディーパバンサ
Dīpavaṃsa

パーリ語で書かれたスリランカ最古の編年史的叙事詩。《島史》《島王統史》と訳される。4世紀後半あるいは5世紀初めの成立編者の名は伝えられていない。全22章より成り,そのうちの第1~8章には仏教の成立からアショーカ王時代に至るインドの政治史・仏教史が,第9章以下には建国からマハーセーナ王(4世紀半ば)の時代に至るスリランカの政治史・仏教史が述べられている。古都アヌラーダプラのマハービハーラ(大寺)に伝わる仏典の注釈書の歴史編に拠って書かれたらしいが,文章はつたなく,内容に重複飛躍が多い。しかしマハーナーマ比丘が本書を増補しつつ書き改めた《マハーバンサ(大史)》には,こうした欠点は見られない。古代のインド人は史書の類をほとんど書き残さなかったため,スリランカに伝わる両史詩は,古代インドの政治史・宗教史研究上の貴重な史料である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ディーパバンサ」の意味・わかりやすい解説

ディーパバンサ
Dīpavaṃsa

パーリ語の韻文で書かれたスリランカ最古の史書。『島史』『島王統史』と訳され,4世紀末あるいは5世紀初めの成立とされるが,編者の名も伝えられていない。建国者ビジャヤに始るスリランカ王統史,仏教の成立とスリランカへの伝来,スリランカ仏教の消長などが記されている。

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世界大百科事典(旧版)内のディーパバンサの言及

【上座部】より

…根本分裂の原因については南・北両伝で大きな相違がある。南伝の《島史(ディーパバンサDīpavaṃsa)》《大史(マハーバンサMahāvaṃsa)》によれば,分裂の原因は十事問題である。十事とは従来の教団の規則(戒律)を緩和した十の除外例であり,この中には〈金銀を蓄えてもよい〉という条項も入っている。…

【上座部】より

…根本分裂の原因については南・北両伝で大きな相違がある。南伝の《島史(ディーパバンサDīpavaṃsa)》《大史(マハーバンサMahāvaṃsa)》によれば,分裂の原因は十事問題である。十事とは従来の教団の規則(戒律)を緩和した十の除外例であり,この中には〈金銀を蓄えてもよい〉という条項も入っている。…

【仏教文学】より

…これは,経蔵中の〈クッダカ・ニカーヤ〉におさめられているが,他のインド文学の作品や《イソップ物語》《千夜一夜物語》にも共通する説話を保有する点で,世界文学史上においても重要な文献である。このほか,叙事詩形式のものとして,スリランカにおける仏教教団の歴史を描いた《ディーパバンサ》《マハーバンサ》をあげることができる。 サンスクリット仏教文学は紀元前後から現れはじめ,内容的には仏伝,讃仏,比喩に大別することができる。…

※「ディーパバンサ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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