マハーバンサ(その他表記)Mahāvaṃsa

改訂新版 世界大百科事典 「マハーバンサ」の意味・わかりやすい解説

マハーバンサ
Mahāvaṃsa

パーリ語で書かれた古代スリランカの編年史的叙事詩。《大史》《大王統史》と訳される。最初の史詩《ディーパバンサ(島史)》が文学作品としてつたないものであったため,その内容を増補しつつ書き改めたもの。《島史》より約1世紀おくれた5世紀後半あるいは6世紀初めに成立した。スリランカ王ダートゥセーナ(一説では在位460ころ-478ころ)の叔父マハーナーマ比丘が,王命によって編纂したものという。全37章より成り,最初の5章に仏教成立からアショーカ王時代にいたるインド本土の政治史,仏教史が,第6章以下にスリランカの建国からマハーセーナ王(在位334ころ-362ころ)の時代にいたるスリランカの政治史,仏教史が記されている。インド・スリランカ古代史の研究史料としての価値は高い。なお,マハーセーナの時代以後のスリランカの歴史が,《チューラバンサCūḷavaṃsa(小史)》の名のもとに引き続きパーリ語で数回編まれ,イギリスの植民地となった1815年におよんでいる。《小史》を含め全体を《マハーバンサ》と呼ぶこともある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マハーバンサ」の意味・わかりやすい解説

マハーバンサ
Mahāvaṁsa

古代スリランカの史書。『大史』あるいは『大王統史』と訳される。5世紀末の修行僧マハーナーマ Mahānāmaの著作といわれる。仏教がブッダによって開かれてインドでアショーカのときまで発展した歴史と,それがスリランカに伝わって4世紀中頃のマハーセーナ王 (在位 334~362) のときまで展開した歴史を述べる。『ディーパバンサ (島史) 』と同じテーマを扱いながら,異なった多くの伝承に拠って,スリランカ仏教の由来を正した。この書の続編は 13世紀のダンマキッティやその後の人々によって,19世紀初めイギリスに征服されるまでの歴史が書き続けられた。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「マハーバンサ」の意味・わかりやすい解説

マハーバンサ

古代スリランカの仏教史書。《大史》,《大統史》,大王統史などと訳。ダートゥセーナ王(在位460年ころ―478年ころ)のとき,王の叔父マハーナーマが編纂したという。釈迦入滅からアショーカ王までのインド歴代諸王と在位年数,仏教の消長・発展,アショーカ王の諸事績,仏教のスリランカ伝播とその発展,スリランカ諸王の在位年数とその治世について記述

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のマハーバンサの言及

【上座部】より

…根本分裂の原因については南・北両伝で大きな相違がある。南伝の《島史(ディーパバンサDīpavaṃsa)》《大史(マハーバンサMahāvaṃsa)》によれば,分裂の原因は十事問題である。十事とは従来の教団の規則(戒律)を緩和した十の除外例であり,この中には〈金銀を蓄えてもよい〉という条項も入っている。…

【上座部】より

…根本分裂の原因については南・北両伝で大きな相違がある。南伝の《島史(ディーパバンサDīpavaṃsa)》《大史(マハーバンサMahāvaṃsa)》によれば,分裂の原因は十事問題である。十事とは従来の教団の規則(戒律)を緩和した十の除外例であり,この中には〈金銀を蓄えてもよい〉という条項も入っている。…

【仏教文学】より

…これは,経蔵中の〈クッダカ・ニカーヤ〉におさめられているが,他のインド文学の作品や《イソップ物語》《千夜一夜物語》にも共通する説話を保有する点で,世界文学史上においても重要な文献である。このほか,叙事詩形式のものとして,スリランカにおける仏教教団の歴史を描いた《ディーパバンサ》《マハーバンサ》をあげることができる。 サンスクリット仏教文学は紀元前後から現れはじめ,内容的には仏伝,讃仏,比喩に大別することができる。…

※「マハーバンサ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android