改訂新版 世界大百科事典 「デュケノア」の意味・わかりやすい解説
デュケノア
Frans Duquesnoy
生没年:1597-1643
フランドル・バロック彫刻を担う重要な一族の一人で,父も弟も彫刻家。ネーデルラント総督アルベルト大公の援助とルーベンスのすすめで1618年以後ローマに滞在し,古代彫刻を模刻する。同地でプッサンと親しみ,ともにティツィアーノの絵画を学ぶ。サン・ピエトロ大聖堂の青銅製天蓋(1627-28)を作るベルニーニに協力したほか,教皇ウルバヌス8世から数多くの注文をうける。ルイ13世から〈王の彫刻家〉という称号を受けるためパリへ向かう途上客死。彼の作品には古代ギリシア彫刻風の様式(《スザンナ》)と開放的でダイナミックな様式(《アンドレア》)の二つの方向がある。しかし同時代の彫刻家に,より大きな影響を与えたのは,ジョバンニ・ダ・ボローニャを思わせる小ブロンズ彫刻(とくに童子(プット)シリーズ)で18世紀の数多くのコピーと真作を区別するのは難しいといわれる。
執筆者:森 洋子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報