改訂新版 世界大百科事典 「トウジンビエ」の意味・わかりやすい解説
トウジンビエ (唐人稗)
pearl millet
Pennisetum americanum (L.) Leeke(=P.typhoideum Rich.)
エジプト,スーダン原産のイネ科の一年草。熱帯アフリカ産のいくつかの野生種の交雑によって生じた作物と考えられている。草姿はトウモロコシに似て,高さ1~3m。稈(かん)は太いが倒伏しやすい。節部に毛が密生する。葉は長いものは1m,幅5cm。温帯域では夏から秋に,茎頂にガマの穂に似た円筒形の穂を出し,長さ30~40cm,ときには90cmになるものもあり,直径2~4cm。穎果(えいか)は米粒よりやや小さく,青みをおびている。現在栽培地は,アフリカとインドが主で,とくにスーダン,中央アフリカに最も多い。そのほかアラビア南部,アフガニスタン,スペインなどにも栽培される。アフリカでは粒をひき割りして粥(かゆ)にして食べ,インドでは粉にしてチャパティにする。茎葉は屋根ふき材料や燃料とされてきたが,近年は飼料としての利用が注目され,世界各地に広まって,日本でも実用栽培が検討されている。やせ地や乾燥地など不良な環境にも耐える。
執筆者:星川 清親
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報