改訂新版 世界大百科事典 「トビトカゲ」の意味・わかりやすい解説
トビトカゲ
flying dragon
翼膜を広げ滑空することができるアガマ科トビトカゲ属Dracoに属するトカゲの総称。インド,東南アジア,中国南部,フィリピンにマライトビトカゲD.volansなど17種ほどが分布する。全長20~25cm,尾はその2/3ほどを占める。頭部は小さくて角張り,後頭部に数本の小さな飾りうろこがある。胴は細長く,胴側部の両側にはそれぞれ5~6本の長くのびた肋骨に支えられた翼膜があり,ふだんはたたまれている。四肢は細長く,樹上性で巧みに幹を伝い登る。森林にすみ,大木の下から上に登りながら昆虫,クモ類を求め,樹冠に達すると翼膜を広げて20~30mも滑空し,他の木の根もと近くに移る。体色は暗褐色で目だたないが,翼膜を広げると赤色,黄色,緑色などの模様があって美しく,大きなチョウが飛ぶように見える。頭側部と尾の基部にも小さいひだがあって,滑空時のバランスをとる。翼膜はまた繁殖期のディスプレーの際にも広げるが,同時に雄はのどの下にある舌骨で支えられた飾袋を張り出して,雌に誇示する。
執筆者:松井 孝爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報