トラス構造(読み)とらすこうぞう(その他表記)truss

翻訳|truss

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トラス構造」の意味・わかりやすい解説

トラス構造
とらすこうぞう
truss

直線的な部材で構成される三角形を単位とした構造骨組の一種で、各部材の端部節点がすべてピン接合となっているものをいう。部材の中間点に荷重が作用すれば、その部材には軸方向力のほかに曲げモーメント剪断(せんだん)力が生じるが、節点の位置に荷重が加わると各部材には軸方向力しか発生しない。このため曲げモーメントを受ける部材と比較して一般に変形が小さい。トラス構造には、すべての部材が一つの平面内に存在する平面トラスと、一つの節点に部材が三次元的に集まる立体トラスとに大別され、立体トラスでは6本の直線材で構成される四面体が単位になっていることが多い。トラス構造は、建築では屋根の小屋組みや張間(支点間の距離)の大きな梁(はり)を構成するのに用いられ、木造の軸組なども筋かいを設け、三角形を単位とした構造骨組(トラス)に置換することにより構造的に有利な骨組を得ている。また、和風小屋組みにおいても、規模が大きくなると構造的にも経済的にもトラス小屋組みのほうが有利となる場合が多い。土木構造物では、トラスによっておもな架構が構成されたトラス橋が、およそ40メートル以上のスパンに用いられる。現在までの世界最大のトラス橋は、片持ち梁(ばり)形式とアーチ形式のトラスとを組み合わせた548メートルの梁間(りょうかん)をもつカナダのケベック橋であるといわれている。トラスは、単位となる三角形の構成の仕方によってキングポストトラスking post truss、クイーンポストトラスqueen post truss、ハウトラスHowe truss、プラットトラスPratt truss、ワーレントラスWarren truss、フィンクトラスFink truss、マンサードルーフトラスmansard roof trussなどがある。送電用鉄塔や鋼製集合煙突などを支持する架構は、地面を固定端とする片持ち梁形式のトラス構造である。

 トラス構造の材料としては木材鋼材が多く、木材は圧縮力を負担し、鋼材は引張り、圧縮両方の力に抵抗するように設計される。節点の構造は、ピンなどの平面内の回転機構を備えたものや、ボール継手などの立体トラス節点用の機構が用いられるが、軽微なトラス梁や溶接トラス構造では節点を完全なピン接合とせずに、節点がピンでないことから生ずる二次的な部材応力をも考慮に入れた設計にすることもある。トラス構造の支点の拘束条件やトラス部材の配列の仕方いかんによっては、トラスの部材応力を単に力のつり合い式のみでは求めえない不静定トラスもしばしば用いられるが、この場合のトラスの解法には部材の変形の関係を考えに入れねばならない。

[金多 潔]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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