機械、土木、建築など広く工業用材料として使用される鉄鋼。組成上から炭素鋼と合金鋼とに分類される。学術的には用いられない用語であるが、単純な精錬を行って製造される普通鋼と、特殊な製造方法による特殊鋼とに分類される。形状から、厚板(プレート)、薄板(シート)、帯鋼(おびこう)(ストリップ)、棒鋼(バー)、条鋼(じょうこう)、線材(ワイヤーロッド)、管(チューブ、パイプ)、形鋼(かたこう)、異形棒鋼のように分類される。鋼は熱処理によってその硬さや強さを大幅に変えられるが、圧延のままで使用される非調質鋼と、熱処理を行ってから使用される調質鋼とに分類される。用途により分類されることもある。たとえば薄板に分類されるもののうちで、とくにプレス加工に適するものをプレス用鋼板という。厚板のうちで、とくに引張り強さを500メガパスカル以上に高めたものを高張力鋼(ハイテンhigh tensile strength steel)という。また、車軸など靭性(じんせい)を要求される機械部材に使用されるものを機械構造用鋼という。各種加工機械の工具のように硬さや耐摩耗性を要求される部材に使用されるのが工具鋼である。ボイラー、熱交換機、タービンなど高温度で使用されるものが耐熱鋼である。鉄鋼は錆(さ)びやすい欠点をもつが、建造物のように風雨にさらされても赤錆(あかさび)が進行しにくいようにリンなどを添加した鋼板は耐候性鋼とよばれる。化学薬品に侵されにくい鋼を一般に耐食鋼というが、とくに12%以上のクロムを添加した耐食鋼をステンレス鋼という。特殊な用途の鋼、たとえば、トランスの鉄心などに使用される電磁鋼板(ケイ素鋼板)、発熱体としての電熱材料、磁石、各種電子材料などのように鉄の特殊な物理的性質を活用する機能材料としての鉄鋼を鋼材に含める場合もある。一般に2%以下の炭素を含有する鉄を鋼といい、これが工業材料として製造されたときに鋼材という。
[須藤 一]
鋼の形材,板材,管材,線材をいう。鋼には炭素を含む普通鋼と,特別に用途を考慮してニッケル,クロム,コバルトなどを添加した特殊鋼とがあるが,鋼材のほとんどはこれらの鋼の圧延によって製造される。なお狭い意味では建設用資材としての鉄鋼製品を鋼材と呼ぶことが多い。建設用資材としてよく使用される鋼材は,形鋼と棒鋼である。基礎工事に必要な土止め用の形鋼としては鋼矢板がある。柱やはりとして重用されているのはH形鋼やI形鋼,箱形鋼などである。建造物の規模によって,使用する鋼材の断面形状の寸法に大小がある。そこで製造する側では,大型・中型・小型などの分類をしている。小型の鋼材としてはL形鋼,山形鋼などの断面のものがあり,条鋼もほとんどこの部類に入る。中型・大型の鋼材は圧延機の動力,供給鋼片の寸法と重量により定まってくる場合が多い。圧延の機構や理論の側面からは,このような大きさによる分類はあまり意味がない。大きさが問題となるのは冷却過程であって,寸法が大きいことから熱容量が大きくて均一冷却が困難になることや,大寸法の割に厚さが小さい部分があると不均一冷却の傾向を助長するなどの問題が生じてくる。また,これらの圧延過程での変形の不均一とともに,製品のそりやよじれ,さらに波などの形状不良の原因にもなりかねない。現在では,熱膨張や組織の変化なども考慮した解析法が発達したので,圧延条件と冷却条件とから形状不良を抑制する方法を合理的に求めることができるようになった。また圧延後の材料が強靱(きようじん)性を増すような熱履歴を与えることも容易となってきた。
形鋼以外で鋼材と呼ばれるものに,鉄筋コンクリートの鉄筋用の棒鋼,異形棒鋼,線材などがある。これらも,いわゆる形鋼の小型ラインとほぼ同規模の熱間圧延によって製造されている。
執筆者:木原 諄二
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…〈こう〉ともいう。国際標準化機構(ISO)では,〈鉄を主成分とし通常固体で要求される形状に成形加工でき,ふつう2.0%(重量)以下の炭素とその他の元素を含有する材料〉と定義している。炭素量が0.1%前後までの鋼は軟らかく,焼入れしてもあまり硬化せず鍛鉄ともいわれる。2%以上の炭素を含有したものは鋳鉄と呼ばれ,鋼を鋳物として用いるときは鋳鋼と呼ぶ(鋳鉄・鋳鋼)。鋼は種々の方法で分類される。炭素鋼と合金鋼,普通鋼と特殊鋼は主として化学成分による分類であるが,製造法,形状の相違による分類などもある(表参照)。…
※「鋼材」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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