改訂新版 世界大百科事典 「トラフサンショウウオ」の意味・わかりやすい解説
トラフサンショウウオ
tiger salamander
Ambystoma tigrinum
両生類トラフサンショウウオ科の代表的な種で,幼生の一部が幼形成熟することで知られる。太平洋沿岸地方を除くアメリカ合衆国の大部分,メキシコ北部に分布し,全長18~22cm,最大33cmで,同類の中では大型。胴が比較的太く,淡黄褐色に黒い縞模様があるが,生息地により変異が多い。平地から山地までの森林から乾燥した半砂漠地帯まで広く分布し,昼間は倒木や石の下に隠れているが,乾燥地では地中にも潜る。早春にかなり深い水中に50個ほどを産卵する。幼生は発達した3対の外鰓(がいさい)をもったまま12cmほどに成長し,同属のメキシコサンショウウオA.mexicanumの幼生(アホロートル)と同様,高地の湖などの環境条件におかれると幼形成熟(ネオテニー)を行い,同じくアホロートルと呼ばれることもある。トラフサンショウウオ科にはトラフサンショウウオ属など2属32種ほどがカナダからメキシコまで分布している。アメリカ合衆国太平洋沿岸に分布するオオトラフサンショウウオDicamptodon ensatusは全長20~30cmの大型で,独立のオオトラフサンショウウオ科に分けられている。
執筆者:松井 孝爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報