改訂新版 世界大百科事典 「トリコデルマ」の意味・わかりやすい解説
トリコデルマ
Trichoderma
不完全菌類の代表的な土壌菌の一つで,とくに落葉など繊維質の多いものを好み,空気中にもごく普通に胞子が飛散している。菌は薄くひろがって生育し,胞子を多量に形成すると胞子の色のため全体が緑色~青緑色となるため,アオカビとまちがわれやすい。胞子をつくる場合は,立ち上がっている空気中の菌糸の先がほぼ直角に分枝を1~2回するので,全体は樹状になり,先端のとっくり状の細胞から胞子が次々と生み出され,できた胞子は表面の粘質物のため塊状にかたまる。セルロース分解力の強いものが多いので,腐った材木にもよく生じ,ときにはシイタケ栽培の榾木(ほだぎ)に発生,シイタケ自体も侵して害菌とされる。世界的に広く分布しており,防黴(ぼうばい)処理の効果判定のテスト菌として使用されている。
執筆者:椿 啓介
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報