トリコデルマ(読み)とりこでるま

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トリコデルマ」の意味・わかりやすい解説

トリコデルマ
とりこでるま
[学] Trichoderma

不完全菌類に属するカビ総称。青緑色の粉を吹いたように基物面に広がり、外観はアオカビに似る。トリコデルマ菌には他の菌に寄生する種が多く、寄生される菌が植物の病原菌のような害菌ならば、天敵菌として利用することができる。たとえば、ある菌は天敵微生物として農作物の白絹(しらきぬ)病の防除に使うこともある。しかし逆に、シイタケのような有用菌を攻撃する有害菌もあり、近年、トリコデルマの名が有名になったのはシイタケ栽培に大被害を与えたためである。またトリコデルマのなかには、強力なセルロース分解酵素セルラーゼを生産する種が発見され、微生物の工業的利用が研究されている。トリコデルマの子嚢(しのう)形成時代は、ヒポクレア属Hypocreaに属するものが多い。

[今関六也]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トリコデルマ」の意味・わかりやすい解説

トリコデルマ
Trichoderma

不完全菌類叢生不完全菌目の1属。土壌中にきわめて普通に生息する。通常の含有機質培養上に容易に成長する。空気中に立上がる菌糸白色または浅緑色で,不規則あるいは多少輪生状に分岐し,頂端に直角に着く細胞はいわゆるフィアライド (小梗) となる。そのとくり状の細胞の先端には小孔を生じ,そこから無性的に生じた胞子がしぼり出される。しばしば多数の胞子が次々に出て,孔口に緑色塊をつくる。この菌はシイタケの榾木 (ほたぎ) の害菌となる。なお,子嚢菌ボタンタケ属 Hypocreaの菌の分生子時代がこの種の形態をとることが知られている。

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