トリチオン酸(読み)トリチオンサンエン

化学辞典 第2版 「トリチオン酸」の解説

トリチオン酸(塩)
トリチオンサンエン
trithionic acid(trithionate)

酸:H2S3O6(194.21).トリチオン酸はIUPAC規則が認める慣用名.IUPAC置換命名法による正式名はスルファンジスルホン酸(sulfanedisulfonic acid).純粋なものは得られないが,水溶液,およびエーテル付加物H2S3O6・2(C2H5)2Oが得られている.水溶液はK塩と,計算量のHClO4との反応濾液から得られる.エーテル付加物は,Na2S2O3粉末に水とエーテルを加え,低温でHClを反応させてつくる.H2S3O6・2(C2H5)2Oは-95 ℃ で凝固する.室温では安定で,50 ℃ でS,SO2を放って分解する.水溶液は二塩基酸.室温でも徐々に分解してS,SO2,H2SO4になる.[CAS 27621-39-2].
塩:アルカリ金属,アルカリ土類金属のほか,多くの重金属の塩も得られている.K塩は,K2S2O3の飽和水溶液にSO2を反応させるか,またはSCl2の石油エーテル溶液にKHSO3の水溶液を加え,低温に放置すると結晶が析出する.K2S3O6(270.39)は斜方晶系で,K と [O3S-S-SO3]2-イオン結晶両端の-S-SO3はひずんだ正四面体型.S-O1.44 Å,S-S2.1 Å.∠S-S-S106°.固体は室温でも徐々に,30 ℃ 以上ですみやかに分解し,Sを放出して硫酸塩になる.アルカリ金属塩をはじめ多くの金属塩もかなり安定で,多くは水に可溶であるが(Ba塩も可溶性),Ag,Hg,Hg塩などは不溶である.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のトリチオン酸の言及

【ポリチオン酸】より

… ポリチオン酸はエーテル付加物として単離されている。たとえばn=1のトリチオン酸H2S3O6は,トリチオン酸ナトリウムを冷却下エーテル中で塩化水素と作用させ,トリチオン酸のエーテル付加物H2S3O6・2.4(C2H5)2Oとして得られる。これは-95℃で凝固し,50℃で硫黄と二酸化硫黄を放出して分解する。…

※「トリチオン酸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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