改訂新版 世界大百科事典 「トルチェロ島」の意味・わかりやすい解説
トルチェロ[島]
Isola di Torcello
イタリア北部,ベネチアの北東約10kmに位置する,ラグーン上の小島。行政上ベネチアに属す。異民族侵入の際の避難所となり,7世紀中ごろ司教座が同島に移された。ガレー船による東方貿易の中継地として栄えたが,ベネチアに主導権を奪われ,9世紀には凋落が始まる。島には運河が巡り,大広場に面して,八角形プランのサン・フォスカ教会(11世紀末),その左にビザンティン様式のサンタ・マリア・アスンタ(聖母被昇天)大聖堂(639創建)が建つ。同大聖堂は9世紀と11世紀に再建され,モザイクの舗床や壁面を多く備える。とくに堂内西壁に繰り広げられる《最後の審判》(12世紀)は壮大で,この時期小型になったモザイク片を用いて,地獄の場面等が細かく,色彩の微妙な変化も加え,写実的に表現されている。アプスには幼児イエス・キリストを抱く聖母が表され,その下段に十二使徒が並ぶ(13世紀)。また,対をなすさまざまな動物(クジャク,ライオンなど)のモティーフが,身廊のイコノスタシスに低浮彫で表現されている。付属洗礼堂は7世紀にさかのぼる。
執筆者:五十嵐 ミドリ
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報