日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガレー船」の意味・わかりやすい解説
ガレー船
がれーせん
galley
紀元前3000年ごろから紀元後18世紀までも続いて、地中海を中心とするヨーロッパで用いられた櫂(かい)で漕(こ)ぐ形の軍用船。ギリシア・ガレー船、ローマ・ガレー船などの名を残しているが、初期のものは漕手(こぎて)が1段だけの一段櫂船uniremeから始まるが、前500年ごろから上下2段に漕手のいる二段櫂船biremeが現れ、前4世紀ごろから三段櫂船triremeの出現が、碑文や絵によって知られる。さらに四段、五段……、十数段というものまで伝えられているが、現実にこれが漕手の上下配列の段数を示すものなのか、別な船級を示す単位だけの意味なのかについては資料が残っていない。三段櫂船の場合のオールの長さは、最上段からおよそ4.27メートル、3.5メートル、2.28メートルであった。船の長さは約40メートル、幅は5~7メートル、そしてオールの数は上から31本、27本、下段も中段とほぼ同数であった。平均速力は2.5ノット(時速約4.6キロメートル)程度で、短時間には8ノットぐらいを出しえた。船体は低く、波に対しては弱かった。帆は初期においては、船の長さに応じて1本ないし2本のマストに追い風のときにだけ四角な横帆をあげたが、のちには三角縦帆であるラティーン・セールも用いられた。最大の武器は船首水面付近に前に向かって突き出させてつくった衝角(しょうかく)ramで、敵船に衝突させて穴をあけて沈没させるか、突っ込んだ船首から敵船に乗り込んで戦うという方法をとった。ガレー船の使用は、1809年のロシアとスウェーデン戦のころまでみられた。現在ガレーということばはボートの名や船の炊事場の名として残っている。
[茂在寅男]