トール油(読み)とーるゆ(英語表記)tall oil

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トール油」の意味・わかりやすい解説

トール油
とーるゆ
tall oil

クラフト法でパルプ製造する際、パルプ原料を水酸化ナトリウムなどで蒸解し、繊維を分別するとき、副生する脂肪酸(45~50%)、樹脂酸ロジン、30~45%)、不けん化物(アルコール、炭化水素類、5~30%)などの混合物をいう。通常、減圧水蒸気分留によりトール油脂肪酸とトール油ロジンに分離する。

[福住一雄]

トール油脂肪酸

収率は3割程度。その品質は脂肪酸95%以上、不けん化物5%以下。過半はアメリカで生産される。主要成分はオレイン酸リノール酸で、リノレン酸以上の多不飽和脂肪酸を含まず、飽和脂肪酸量もきわめて少ない。またきわめて少量の特異な脂肪酸を含む。アルキド樹脂など塗料樹脂用に、アゼライン酸、オレイン酸、リノール酸製造などに使われる。

[福住一雄]

トール油ロジン

主成分はアビエチン酸型樹脂酸。製紙用サイズ剤、合成ゴム用乳化剤、印刷インキ、塗料などに用いられる。

[福住一雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トール油」の意味・わかりやすい解説

トール油
トールゆ
tall oil

硫酸塩パルプまたはソーダパルプ製造廃液から得られる樹脂酸や脂肪酸から成る油状物。アビエチン酸,オレイン酸,リノレイン酸,テルペン系炭化水素,ステリンなどが多く含まれ,蒸留により,淡色の樹脂酸の少い蒸留トール油とロジンに分別される。工業的には安価な脂肪酸原料として,グリース,工業用石鹸,乳化剤,ペイント,印刷用インキの製造に用いられる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報