トール油(読み)トールゆ(その他表記)tall oil

改訂新版 世界大百科事典 「トール油」の意味・わかりやすい解説

トール油 (トールゆ)
tall oil

マツ属木材を原料としてパルプをつくるときに得られる黄褐色または暗褐色の油状副産物。すなわちクラフトパルプ製造時の蒸解液上部に集まる黒液は,濃縮中にトール油セッケンを分離する。これを酸で処理したものがトール油である。収率はパルプ1t当り20~90kg。組成ロジン27~31%,脂肪酸30~35%,ピッチ13~21%,その他6~10%(アメリカの例)。各成分への分離は減圧下での蒸留により行われる。ロジントールロジンと呼ばれ,紙のサイズ剤,各種の滑り止め剤として使われる。脂肪酸はトール脂肪酸と呼ばれ,オレイン酸50%,リノール酸35%,その他8%からなる。これらのうちリノール酸は価値が大きく,蒸留して分けてとりだされ,化学的に変性され,ポリアミド樹脂の合成,接着剤,インキなどの原料となる。アメリカでは全脂肪酸生産量の1/3をトール脂肪酸が占める。トール油分離と同時に,揮発部がトールターペンティンとして集められ,テレビン油の資源となる。日本ではトール油も,トールターペンティンも生産されず,すべてが輸入に負っている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「トール油」の意味・わかりやすい解説

トール油
とーるゆ
tall oil

クラフト法でパルプを製造する際、パルプ原料を水酸化ナトリウムなどで蒸解し、繊維を分別するとき、副生する脂肪酸(45~50%)、樹脂酸(ロジン、30~45%)、不けん化物(アルコール、炭化水素類、5~30%)などの混合物をいう。通常、減圧水蒸気分留によりトール油脂肪酸とトール油ロジンに分離する。

[福住一雄]

トール油脂肪酸

収率は3割程度。その品質は脂肪酸95%以上、不けん化物5%以下。過半はアメリカで生産される。主要成分はオレイン酸とリノール酸で、リノレン酸以上の多不飽和脂肪酸を含まず、飽和脂肪酸量もきわめて少ない。またきわめて少量の特異な脂肪酸を含む。アルキド樹脂など塗料樹脂用に、アゼライン酸、オレイン酸、リノール酸製造などに使われる。

[福住一雄]

トール油ロジン

主成分はアビエチン酸型樹脂酸。製紙用サイズ剤、合成ゴム用乳化剤、印刷インキ、塗料などに用いられる。

[福住一雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トール油」の意味・わかりやすい解説

トール油
トールゆ
tall oil

硫酸塩パルプまたはソーダパルプ製造廃液から得られる樹脂酸や脂肪酸から成る油状物。アビエチン酸,オレイン酸,リノレイン酸,テルペン系炭化水素,ステリンなどが多く含まれ,蒸留により,淡色の樹脂酸の少い蒸留トール油とロジンに分別される。工業的には安価な脂肪酸原料として,グリース,工業用石鹸,乳化剤,ペイント,印刷用インキの製造に用いられる。

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