日本大百科全書(ニッポニカ) 「グリース」の意味・わかりやすい解説
グリース(Johann Peter Griess)
ぐりーす
Johann Peter Griess
(1829―1888)
ドイツの有機化学者。工業都市カッセルに生まれる。ドイツの大学や工場を転々としたが、1858年マールブルクのコルベの研究室で、アミノ基を含む芳香族化合物に対する亜硝酸の作用を発見した。これが端緒となって、ホフマンの助手となりロンドンに渡り、王立化学学校でジアゾ反応の研究を始めた。1864年にはカップリング反応を発見、かくして染料の新合成法を開発した。ジアゾ反応は染料のみならず製薬の面でも、純粋の有機合成においても重要な地位を占めている。
[都築洋次郎]
グリース(潤滑剤)
ぐりーす
grease
半固体の潤滑剤で、潤滑油に金属せっけんなどの粘稠(ねんちゅう)剤を練り合わせてつくるバター状のものである。基油の潤滑油は通常鉱油であるが、特殊用途にはシリコーン油、ポリエステル、ポリグリコールなどが用いられる。金属せっけんとしては、カルシウム、ナトリウム、アルミニウム、バリウム、リチウムなどの脂肪酸塩が多く用いられる。数種類のグリースのうち、鉱油とカルシウムせっけんからつくられるカップグリースがもっとも広く使用されており、粘度がきわめて高く、含有する粘稠剤が金属表面に吸着層を形成するため荷重に耐える性能が大きい。このため、軸受に対する回転軸の荷重の大きい箇所、給油しにくい箇所、潤滑油の流れ出すことを嫌う箇所などに使用する。グリースカップに一度給油しておくと長時間使用できる長所があるが、放熱性が悪いので、温度上昇がおこるという欠点がある。
[難波征太郎]