日本大百科全書(ニッポニカ) 「アビエチン酸」の意味・わかりやすい解説
アビエチン酸
あびえちんさん
abietic acid
三環式ジテルペンに属するカルボン酸でロジンの主成分として存在している。マツ科植物の樹幹を傷つけると樹液を分泌し、しだいに固化して樹脂(オレオレジン、バルサムともいう)となる。これを水蒸気蒸留してテレビン油を溜出させ、残った樹脂酸混合物(コロポニイ、ロジンともいう)を過熱水蒸気で蒸留すると、ジテルペノイド樹脂酸(アビエチン酸)が結晶として得られる。水に不溶であるが、アルコール、ベンゼン、クロロホルムに溶解する。ラッカー、ワニスの乾燥剤、乳酸酵母の成長促進剤に用いる。メチルエステルは、ワニス、ラッカー、リノリウムの溶剤として使用される。カルシウム塩は、防水剤、皮なめし、製紙などに用途をもっている。
[佐藤菊正]