ポリエステル樹脂の一種でおもに塗料に使われている。エチレングリコール、グリセリン(グリセロール)やペンタエリトリトールなどの多価アルコールと、無水フタル酸や無水マレイン酸などの二塩基性酸とを加熱してつくる。たとえばグリセリンと無水フタル酸からつくった樹脂をグリプタル樹脂というが、これ自体にはあまり使い道はない。ところが、これに乾性油(あまに油、桐油(きりゆ)、大豆油など)またはそれらを構成している不飽和脂肪酸(リノール酸、オレイン酸など)、または脱水ひまし油などを適当量加えて反応させたのち塗布すると、熱や空気中の酸素の働きで構成成分である不飽和脂肪酸に二重結合の橋架けがおこり、弾性に富み、耐水性、耐薬性の強いものができあがる。用途としては、そのまま、あるいはメラミンや尿素樹脂(ユリア樹脂)と混合して、屈曲性のある金属塗料として使用されている。
[垣内 弘]
『伊保内賢編、大井秀三郎ほか著『プラスチック活用ノート』3訂版(1998・工業調査会)』▽『桐生春雄・笠松寛編著『高機能塗料の基礎と物性』(2003・シーエムシー出版)』
多価アルコールと多塩基酸の重縮合によって得られる樹脂の総称で,アルコールalcoholと酸acidを組み合わせたalcidから出た用語であるが,一般にはそのうち橋架け構造をつくりうる熱硬化性樹脂を指す。代表的なものは無水フタル酸とグリセリンの重縮合体(グリプタル樹脂)である。
アルキド樹脂は,種々の酸,アルコールによって変性することができ,いろいろな用途に用いられるが,とくに不飽和脂肪酸,乾性油,ロジン,フェノール樹脂などで変性したものは塗料として用いられる。全アルキド樹脂の70%が油脂変性タイプであり,そのほとんどが塗料用で,ほかに接着剤としての用途もある。不飽和脂肪酸,乾性油などで変性したものは,常温,空気中で,酸素の作用により硬化し,得られた樹脂(塗膜)は耐候性,光沢,着色性にすぐれている(アルキド樹脂塗料,またはフタル酸樹脂塗料と呼ばれる)。
グリセリンと無水フタル酸を加熱(200℃)することにより縮合がおこり,液状流動性のある状態を経て不溶不融となるが,乾性塗料として用いる際は,この重縮合時に亜麻仁油,キリ油などの脂肪酸を加え,流動性のある状態にまで縮合させ,溶媒,顔料その他を加えて塗料とする。乾燥促進剤としてナフテン酸コバルトなどを加えておくと室温硬化塗料が得られ,加えない場合には150℃くらいで硬化する焼付塗料が得られる。
執筆者:森川 正信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
アルコール(alcohol)のal-と酸(acid)の-cidにその名称が由来する樹脂で,多価アルコールと多塩基酸の縮合によって得られる.グリセリンとフタル酸によるグリプタル樹脂などが代表的なものである.製法には二通りあり,第一は脂肪酸,多塩基酸,多価アルコールをポリエステル化する法(脂肪酸法)と,第二は油脂と多価アルコールとの反応によってモノグリセリドをつくり,さらに多塩基酸を加えてエステル化する法(モノグリセリド法)である.二塩基酸と二価アルコールとの縮合,あるいは不乾性脂肪酸で変性したアルキド樹脂は可溶性(エステル,ケトン,芳香族炭化水素など)で,不転化性アルキドとよばれる.二塩基酸と三価以上の多価アルコールとの縮合物,あるいは一部,酸に不飽和基を含むものは縮合の初期には可溶性であるが,加熱あるいは酸化によって不溶の架橋体となるため,転化性アルキドとよばれる.多価アルコールと多塩基酸の加熱の際に添加して性質をかえるものを変性剤とよび,あまに油,ひまし油などの脂肪酸,ロジン,フェノール樹脂,その他ウレタン,エポキシ,ビニルモノマーが有名である.塗料,接着剤,積層品,成形品などに用いられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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