印刷インキ(読み)いんさついんき(英語表記)printing ink

翻訳|printing ink

日本大百科全書(ニッポニカ) 「印刷インキ」の意味・わかりやすい解説

印刷インキ
いんさついんき
printing ink

印刷に使われるインキ総称顔料(がんりょう)をビヒクルビークル)vehicle(媒質または展色料(てんしきりょう)ともいう)といっしょに十分練り合わせて細かく分散させてつくる。ビヒクルは油、溶剤樹脂などを溶かし合わせてつくった透明な液で、印刷に必要な流動性をインキにもたせ、印刷後は速やかに乾いてじょうぶなインキ膜を形成するための材料である。顔料は水に溶けない色料で、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、ベンジジンイエロー、ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、チタンホワイトなどが印刷インキ用として多く使われている。また、金色には真鍮(しんちゅう)粉、銀色にはアルミ粉が用いられる。印刷インキにはこのほか、乾燥性や印刷適性を調節するため、少量の助剤が加えられる。印刷インキは印刷方式、印刷される材料によって成分や性質が大幅に異なる。印刷方式により新聞インキ、端物(はもの)インキ、凸版輪転インキ、フレキソインキ(以上凸版印刷用)、枚葉オフセットインキ、オフ輪(オフセット輪転機)インキ、平版新聞インキ(以上平版印刷用)、グラビアインキ、凹版インキ(以上凹版印刷用)、スクリーンインキ、謄写版インキ(以上孔版印刷用)、そのほか磁気インキ、プリント配線などに使うレジストインキ、導電性インキなどもある。印刷される材料は紙が主体であるが、プラスチック、布、金属、ガラスなどさまざまであるから、それに適応した組成のインキが必要である。したがって筆記インキとは根本的に異質のものである。印刷速度の上昇にこたえる速乾性インキ、たとえば紫外線で瞬時に乾くインキ(UVインキ)、環境汚染をなくすための水性グラビアインキや植物油使用のインキ、布地熱転写インキなどが実用化されている。

[平石文雄・山本隆太郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「印刷インキ」の意味・わかりやすい解説

印刷インキ
いんさつインキ
printing ink

印刷用のインキ。筆記用インキに比べて,一般に流動性が小さく,塗料と同じくらいの濃度をもつ。歴史は古く,すでに中国では5世紀頃には,植物に粘土,すす,油煙などを混ぜたものが生れていた。 J.グーテンベルクの使用したものも,ワニスとか亜麻仁油に油煙を混合したもので,この種のインキは 18世紀頃まで使用された。 18世紀後半になってようやく色インキがつくられるようになり,各種の顔料を使った色インキの製造が行われるようになったのは 19世紀後半から,化学工業としてのインキ工業が発展したのは 20世紀になってからのことである。成分は顔料,染料と合成樹脂,重合油に分けられ,これを混和,練成したものを熟成して製造するが,高級美術印刷や特殊印刷などに適合するようにインキ製造技術が進歩し,界面活性剤なども材料に利用されている。種類は多く印刷物,印刷機,乾燥形式などの相違によって分類されているが,通常は新聞インキと一般インキに分け,一般インキは平版,凸版,輪転,謄写版,写真版,グラビア,特殊グラビア,ブリキ版などに細分されている。

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