ドイツの作家カロッサによる日記体の中編小説。1913年に発表された小説処女作『ドクトル・ビュルガーの最後』に詩編『逃走』を加えて30年に改作したもの。自伝的性格の濃い彼の小説のなかではフィクションの要素の比較的多い作品であるが、背景にあるのは、開業医であった若きカロッサの体験である。病める者ひとりひとりの心に触れたいと願う多感な医師ビュルガーは、医業をも事務的に処理することを余儀なくする現実にぶつかって、心の痛みと孤独にさいなまれる。そうして肺結核を病む薄幸の一女性への愛のなかに、彼は医師としての己を忘れて没入していき、女性の死後、自殺を遂げる。ゲーテの『若きウェルテルの悩み』(1774)の現代版ともよばれるこの作品に直接描かれるのは、前記のような青年医師の苦悩であるが、それはひとり医師のみならず、職業的技術と人間性との間の不協和に苦しむ人間一般の姿である。作者が生活したパッサウ(作中ではグレンツブルク)の風物を描いて美しい。
[平尾浩三]
『手塚富雄訳『ドクトル・ビュルゲルの運命』(岩波文庫)』▽『中山誠訳『ビュルガー先生の運命』(『世界文学全集25 リルケ・カロッサ』所収・1979・学習研究社)』
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