ドップラーログ(読み)どっぷらーろぐ(その他表記)Doppler log

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドップラーログ」の意味・わかりやすい解説

ドップラーログ
どっぷらーろぐ
Doppler log

船底の送波器から海底に向けて超音波を発射し、海底からの反響音(エコー)に含まれるドップラー周波数によって船速を測定する装置ドップラーソナーともいう。ある物体から発射された速度cの電波や音波が、相対速度vの物体で受信されたとき、受信周波数frは発射周波数ftと異なり、その差fdは
  fd=fr-ft=(2ftv)/c
となる。

 ドップラー効果によって船舶の対地速度を求める特許は、ソ連のチロウスキーが1932年に出願しているが、技術的に未解決な問題が多く、実用化されたのは60年ごろからである。数式のうちftとc既知の数値なので、frを測定すればvを求めることができる。しかし算出されたvには、音速の誤差、音線の屈折による誤差、船体動揺傾斜による誤差などが含まれる。このうち、船体の動揺や傾斜による誤差は、送信機から発射する超音波を前後または左右の対(つい)になったペアビームとすることによってある程度修正できるので、現在大型船用の高級なログはすべてペアビームである。超音波が海底に反射する場合は対地速度が求められる。しかし200メートル程度以上の深度があると、ドップラーログに用いられている数百キロヘルツの超音波は減衰が多くなり海底からのエコーが得られなくなる。この場合には海面付近の微小浮遊物やプランクトン、またはもう少し深い所の水塊からのエコーを利用することができる。これから得られる船速は対水速力となる。

 ドップラーログの長所はなんといっても対地速力が測定できることであり、これによって船の位置や運動を精度よく知ることができることである。しかし、高度の信号処理や演算機能を要するために装置が複雑で高価になるので、現状ではとくに操船の困難な巨大船に装備され、一般の貨物船などには普及していない。また、きわめて簡単なシングルビームで対水速力のみを測定するドップラーログもあり、安価ではあるが精度は十分ではない。

[飯島幸人]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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