デジタル大辞泉
「なへ」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
な‐へ
〘接助〙 活用語の
連体形を受け、ある事態と同時に、他の事態の存することを示す
上代語。…とともに。…にあわせて。…するちょうどその時に。→語誌(1)(2)。
※
万葉(8C後)八・一五四〇「今朝の朝明雁が音寒く聞きし奈倍
(ナヘ)野辺の浅茅そ色付きにける」
※
奥義抄(1135‐44頃)上「古歌詞〈略〉なへ からになと云ふ心也」
[語誌](1)「へ」の
万葉仮名には「倍」「戸」が用いられているので、下二段活用動詞「並ぶ」または「並む」の連用形が
語源で、したがって「なべ」と第二音節を
濁音にみる説もあったが、借訓仮名では「苗」字が用いられているところから、第二音節は
清音であると考えられるようになっている。なお、「な」は、音の意味の「ね」または「な」である可能性もある。
(2)「万葉‐三二〇二」の「柔田津に舟乗りせむと聞きし苗
(なへ)なにかも君が見え来ざるらむ」のような例では、「その時にして、しかも」「…のに」という
語感が伴う。また、
挙例の「奥義抄」の「からに」は「と」「たちまち」などの意をいうものであろう。
(3)
上代には「なへ」
単独でも、また
格助詞「に」を伴った「なへに」の形でも用いられたが、中古以後は「なへに」の形のみとなる。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報