改訂新版 世界大百科事典 「ナムサダン」の意味・わかりやすい解説
ナムサダン (男寺党)
nam - sa - dang
朝鮮の旅芸人。李朝の中期以後,記録にあらわれるサダン(当て字として寺党,舎堂,捨堂,舎正,社堂,社党,舎党など)は最下層の賤民で,居士(コサ)と称する男と同性愛関係を結び,いくつかの寺党と居士の組が集まって一群となって村から村へと流浪の旅をつづけ,村の広場などで歌舞をみせ,そのとき観客にこびをうり売色をも辞さない旅芸人達であったが,李朝の後期男色を売るようになってサダンは少年のナムサダン(男寺党)にかわった。職業的な流浪芸人として1920年代まで全国の農漁村を回りながら民衆娯楽を提供してきた。その主なレパートリーは農楽(のうがく)(ノンアク),皿回し(ボナ),とんぼ返り(サルパン),綱渡り(オルム),仮面舞劇(トッボギ),人形劇(トルミ)などで,才人(ジエイン),広大(クワンデ)(賤民芸能集団)らの歌舞百戯の伝統を継承している。彼らの仮面舞劇は山台都監系の演劇に比べて,上層階級に対するもっとも鋭い風刺とパロディをあらわしており,とくに現存の唯一の民俗人形劇であるコクトカクシは,彼らによって今日まで伝承されてきた。
→朝鮮演劇
執筆者:李 杜 鉉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報