サンスクリットのグリハパティgṛha-patiの訳。仏道を修行する在家の男子。インドの維摩(ゆいま)居士は有名。中国では,唐・宋時代,禅がさかんになるとともに居士と称する人が漸増。龐居士,韓愈,白居易などがよく知られ,明代の《居士分灯録》,清の《居士伝》などの居士伝も選述されている。宋代の字書《祖庭事苑(そていじえん)》は,(1)仕官を求めず,(2)寡欲にして徳を積み,(3)富裕で,(4)道を守りみずから悟ることの4点をあげて,居士の定義としている。日本では,中世武家で直庵居士と称した大友貞宗,近世武士階級の鈴木正三などが代表的な人である。明治時代以後では,欧米に禅を紹介した鈴木貞太郎(大拙)がよく知られている。なお,居士は在家の男子の法名に付される語でもある。
→居士仏教
執筆者:竹貫 元勝
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中国で学徳高くして仕官していない人(処士)をいうが、仏教では在家(ざいけ)の男子で仏教に帰依(きえ)して受戒し仏法を求める徳行ある者をいう。サンスクリット語のグリハ・パティgha-patiの訳。迦羅越(からおつ)、疑叨賀鉢底(げとうがぱってい)と音写し、家主、長者、在家と訳す。またクラ・パティKula-pati(家族の長)の訳でもある。インドでは出家せずに家にいる男子のことであるが、とくに四姓のなかでは商工を業とする毘舎(バイシャVaiśya。第三の庶民階級)の富豪をいう。すなわち財にいる士の義でもあるとされる。
日本では高徳の士の法名の下につける称号として用いられ、さらに一般庶民の戒名にも用いられるようになった。
[伊藤瑞叡]
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…家での祭式は非常に重要であって,前4世紀ごろまでに《グリヒヤ・スートラGṛhya‐sūtra(家庭経)》がバラモンの間でつくられ,結婚式や葬式を含む家での祭式が詳しく規定された。家長はグリハメーダgṛhamedha,グリハパティgṛhapatiなどとよばれ,仏教経典と碑文ではグリハパティは富裕な商人や農民を意味し,〈居士〉と漢訳された。(2)クラは本来集団を意味する語で,ふつう家族をさし,血縁を重点におくところから,やや広い範囲の親族をさす例が多い。…
… これでわかるように,戒名は本来は生前に仏教に帰依して優婆塞(うばそく),優婆夷(うばい),または沙弥,沙弥尼の戒律を受けたとき付けるべきものである。これを逆修(ぎやくしゆう)戒名というが,これを表すものが居士(こじ),大姉(だいし),信士,信女などの位号と呼ぶものである。これは生前に受戒入道して仏道修行をしたという意味である。…
…
[インド]
インド仏教における居士の原語はグリハパティgṛhapatiで,その原意は富裕な資産家を意味する。初期仏教の時代,マガダ国を中心に鉄の使用が盛んになり農耕器具の発達により豊かな農産物が各地へ売買されるにいたり,富裕な商工業者の資産家が出現した。…
※「居士」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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