改訂新版 世界大百科事典 「ノトルニス」の意味・わかりやすい解説
ノトルニス
notornis
Porphyrio mantelli
ツル目クイナ科の鳥。ニュージーランドの特産種で,長い間観察されたことがなく,絶滅したと思われていたが,1948年に少数の個体が生き残っていることが確かめられた。全長約63cm。羽色は全体に青紫色で,背中はオリーブ色を帯び,くちばしと額板は赤い。下尾筒は白色。この鳥は飛行力がなく,もっぱら地上で生活している。頭部は体の大きさの割りに大きく,くちばしは短く,たいへん太く,脚も本種の含まれるセイケイ属の他の鳥よりやや短くて太い。
この種は,再発見されるまでは,19世紀に採集された4点の標本によって知られていただけであった。1948年に南島の南西部にあるテ・アナウ湖付近で1羽がつかまった。その後の調査によると,テ・アナウ湖の西約5~10kmに位置するマーティンソン山系のいくつかの小さな谷間の林に約40~60羽が生息していることがわかった。現在,この地域は政府の保護地区に指定されている。なお,ノトルニスの化石あるいは半化石はニュージーランド北島の貝塚や南島の他の地域で発見されている。この種はニュージーランドに捕食獣が生息していないために,敵から逃れる必要がなく,飛行力を必要としなくなったと考えられている。一名タカヘともいうが,これは,マオリ族の呼名のtakaheaに由来する。
執筆者:安部 直哉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報