改訂新版 世界大百科事典 「ハキリアリ」の意味・わかりやすい解説
ハキリアリ (葉切蟻)
leaf-cutting ant
南北アメリカの熱帯,亜熱帯を中心に温帯地方にまで分布する約10属200種の菌栽培アリのうち,ハキリアリ属Attaやヒメハキリアリ属Acromyrmexのように植物の葉を切り取って巣にもち帰り,その上に菌類を培養するものをハキリアリという。数十種類が知られている。テキサスハキリアリAtta texanaはメキシコ北東部,テキサス州,ルイジアナ州に分布し,働きアリは多型で体長1.5~12mm,後頭部に1対,胸部背面に3対の刺状突起があり,全体は暗赤褐色。巣は地中につくられ,繁栄したコロニーのものはきわめて大規模で,径20m,深さ6mにおよび,多数の菌室が通路で連結していて働きアリの数も数十万に達する。おもに中型の働きアリが巣から出て植物の葉や花などをかみ切ってもち帰り,小型のアリがさらに細かくかみ砕いて菌室に積み上げ,その上に固有の菌を育てる。植物体の表面に繁殖した菌糸から微小な小球体が育ち,これが食物となる。大型の働きアリは巣の防衛に当たり,これにかまれると激痛があり,皮膚から出血することがある。婚姻飛行は晴れた日の月の出ていない夜行われ,雌アリは口の奥に菌糸を入れて飛び立つという。場所によっては農業に被害を与えることもある。
執筆者:久保田 政雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報