ハナカメムシ(その他表記)flower bug

翻訳|flower bug

改訂新版 世界大百科事典 「ハナカメムシ」の意味・わかりやすい解説

ハナカメムシ (花亀虫)
flower bug

半翅目ハナカメムシ科Anthocoridaeの昆虫総称。他の昆虫や昆虫の卵,ハダニ類などを食べる。花上生活をすることがあるのでこの名がある。きわめて小型ですべて食虫性。世界に約500種,日本から約30種が記録されている。体は扁平で細長く,頭部は複眼をこえて著しく前方に突き出す。単眼をもつ。触角は4節で先端の2節が糸状のものと,基部2節と同様な太さのものとがある。

 ズイムシハナカメムシLyctocoris beneficus体長3.5mm内外。暗褐色で稲わらやそだに生活し,鱗翅類幼虫(ズイムシなど)などを吸食する天敵で,本州,四国,九州に分布する。クロハナカメムシAnthocoris japonicus黒色で体長3.5mm内外。膜質部の基部は淡色アブラムシなどを吸食する。ヒメハナカメムシOrius sauteriは2mm内外の小型種で黒色。半翅鞘は淡色で先端は黒い。各種植物上や花の上でハダニ類,昆虫の卵や幼虫などを吸食する。まれに人の皮膚を刺すことがある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハナカメムシ」の意味・わかりやすい解説

ハナカメムシ
Anthocoridae; flower bug

半翅目異翅亜目ハナカメムシ科に属する昆虫の総称。種々の植物の花や葉の上などにみられるカメムシ。体長 1.5~4mmほど。体は扁平で,黒っぽく光沢がある。頭頂は複眼をこえて前方に突出し,複眼の間には2個の単眼がある。触角は4節。前胸背は鐘状形で前葉部は隆起する。前翅は楔状部を欠く。短翅型のものもある。肢は短く,腿節は太いが,続く脛節は細い。食虫性で,各種の昆虫の卵,幼虫,成虫やハダニ類を吸食するので,農業や園芸益虫となるものが少くない。ズイムシハナカメムシ Lyctocoris beneficusは現在はかなり減少したが,刈取り後の稲わらにひそむズイムシ (ニカメイチュウ) を攻撃して吸食する重要種で,体長 4mm内外,体は黒褐色で,前翅は白っぽい。 (→異翅類 , 半翅類 )

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハナカメムシ」の意味・わかりやすい解説

ハナカメムシ
はなかめむし / 花椿象
花亀虫
flower bug

昆虫綱半翅(はんし)目異翅亜目ハナカメムシ科Anthocoridaeの昆虫の総称。カスミカメムシ科(旧、メクラカメムシ科)Miridaeに似ているが、頭部は前方に突出し、2個の単眼がある点で異なる。また、長翅型では前翅にくさび状部を欠く。触角は4節からなり、前胸背は鐘状を呈し、その前葉部は隆起する。長翅型においては、前翅膜質部の脈は室をつくらない。脚(あし)は短く、前腿節(ぜんたいせつ)が太くなることがある。小形のカメムシで、おもに肉食性。種々の昆虫の卵、幼虫、成虫のほか、ハダニなどを捕食する。そのため、多くの有益種を含んでいる。ヒメハナカメムシOrius sauteriは体長約2ミリメートルと小形で、体が黒褐色で半翅鞘(しょう)は白っぽい。花上や葉、枝上に生活し、小昆虫やハダニを捕食する。ズイムシハナカメムシLyctocoris beneficusは体長約4ミリメートルで、色彩は前種に似る。稲藁(いねわら)に潜むニカメイチュウを捕食する有益種である。

[林 正美]

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