ハダニ(読み)はだに(英語表記)spider mite

翻訳|spider mite

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハダニ」の意味・わかりやすい解説

ハダニ
はだに / 葉蜱
spider mite

節足動物門クモ形綱ダニハダニ科Tetranychidaeに属するダニの総称。汎(はん)世界的に分布し、重要な農業害虫になっている種類が多い。日本産ハダニ類は50種以上に及ぶ。多くのハダニは、顎体(がくたい)部にある触肢から糸を出すが、英名はその吐糸行動に由来する。糸はクモの幼生の分散にみられる吐糸による分散に利用する(リンゴハダニミカンハダニなど)。分散とは逆に、寄主植物の葉から個体の転落を防ぐ命綱の役目をすることがある(ミカンハダニ、ナミハダニなど)。体色は、黄色、黄緑色、橙(だいだい)色、褐色、赤色など多様である。したがって、かつての俗称「アカダニ」は不適当。体長成虫0.2~0.5ミリメートル、雌は卵形または球形、雄は雌よりやせて小さく、逆三角形を呈する。ハダニの1対の鋏角(きょうかく)は左右の基部が合体して、楕円(だえん)形の担針(たんしん)体を形成し、ここから口針状の可動指が突出していて、植物体液を吸収するのに適応している。植物の葉、茎に口針を差し込み、細胞内容物を吸収するので、加害部は白い斑紋(はんもん)となって残る。果実を加害することもある。ハダニの生活環は、卵→幼虫→第1若虫(第1ニンフ)→第2若虫(第2ニンフ)を経て成虫になる。脚(あし)は幼虫では6本、第1若虫以降は8本になる。発育速度が速い種類が多く、年間10世代以上を経過する種類もある。繰り返される農薬散布が原因する薬剤抵抗性のハダニの出現が世界的に問題になっている。そのため、ハダニの防除に、天敵としてカブリダニ類を利用したハダニの生物的防除、あるいは農薬とカブリダニを併用した総合防除が研究されている。重要な農業害虫として、ミカンハダニ、リンゴハダニ、スギノハダニカンザワハダニ、ナミハダニなどがある。

[森 樊須]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハダニ」の意味・わかりやすい解説

ハダニ
Tetranychidae; spider mite

クモ綱ダニ目ハダニ科に属する種類の総称。広義にはヒメハダニ科 Tenuipalpidaeも含める。体長 0.2~0.8mmで,雄は雌より小さい。雌は卵形または球形であるが,雄は逆三角形。赤色の種が多いが,黄,黄緑,橙,赤褐色などのものもみられ,また同一個体でも空腹時と満腹時,活動期と休眠期で体色が微妙に異なる。鋏角基部が合一して楕円形の担針体を形成し,そこにある針で植物の組織液を吸収する。卵→幼虫→第1若虫→第2若虫→成虫となるが,好適環境では7~12日間で成虫になり,年に数世代を繰返す。日本産は約 70種が知られていて,特に葉の裏面を加害する種が多く,農林害虫となっている。柑橘類に害を与えるミカンハダニ Panonychus citri,バラ科の果樹,特にリンゴに多いリンゴハダニ,スギの大害虫スギノハダニ Oligonychus hondoensis,茶の大害虫カンザワハダニ Tetranychus kanzawai,多くの農作物を害するナミハダニ T. urticaeなどが知られている。 (→ダニ類 )

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