ハロゲノホスファゼン

化学辞典 第2版 「ハロゲノホスファゼン」の解説

ハロゲノホスファゼン
ハロゲノホスファゼン
halogenophosphazenes

ホスファゼンのXがハロゲン原子である化合物の総称.六員環,八員環など環状化合物と鎖状の高分子化合物がある.【】六員環化合物:
(1)ヘキサクロロシクロトリホスファゼン(hexachlorocyclotriphosphazene);(PCl2N)3(347.66).塩化ホスホニトリル(略号,PNC),二塩化窒化リンともいう.PCl5とNH4Clを,クロロベンゼンや1,1,2,2-テトラクロロエタン中で長時間加熱すると,(PCl2N)3 と (PCl2N)4 の混合物が生成するので,これを減圧分留すると得られる.無色の斜方晶系結晶平面六員環構造で,ClはPに平面の上下に結合している.密度1.98 g cm-3.融点256 ℃.250~350 ℃ で開環重合してポリ(ジクロロホスファゼン)を生じ,350 ℃ 以上では逆にオリゴマーとなる.エーテルベンゼン四塩化炭素可溶.水には比較的安定である.各種置換基をもつホスファゼン,ポリホスファゼンの製造原料.[CAS 940-71-6] 
(2)ヘキサブロモシクロトリホスファゼン(hexabromocyclotriphosphazene);(PBr2N)3(614.37).無色の結晶.分子はほぼ平面の六員環構造.密度3.18 g cm-3.融点192 ℃.[CAS 13701-85-4] 
(3)ヘキサフルオロシクロトリホスファゼン(hexafluorocyclotriphosphazen);(PF2N)3(248.93).無色の結晶.平面六員環構造.密度2.237 g cm-3.融点26 ℃,沸点51 ℃.[CAS 15599-91-4]【】八員環化合物:(PX2N)4.-P=N-P=N-P=N-P=N-の八員環構造をとり,各Pに2個ずつのハロゲン原子が結合している.環は平面ではない.加熱により開環重合して鎖状ポリマーになる. 
(1)オクタクロロシクロテトラホスファゼン(octachlorocyclotetraphosphazene);(PCl2N)4(463.54).シクロ-テトラキス(ジクロロホスホニトリル)(cyclo-tetrakis(dichlorophosphonitrile)ともいう.無色の結晶.環は安定ないす形と準安定な舟形の2形がある.密度2.18 g cm-3.融点123.5 ℃,沸点328.5 ℃.加熱すると開環重合して鎖状ポリマーになる.ベンゼン,エーテル,四塩化炭素などに可溶.[CAS 2950-45-0] 
(2)オクタブロモシクロテトラホスファゼン;(PBr2N)4(819.15).無色の結晶.密度3.44 g cm-3.融点202 ℃.[CAS 14621-11-5] 
(3)オクタフルオロシクロテトラホスファゼン;(PF2N)4(331.91).無色の結晶.密度2.239 g cm-3.融点30.4 ℃(三重点),沸点89.7 ℃(740 mm).[CAS 14700-00-6]【】その他の環状化合物:n = 5[CAS 14596-41-3],n = 6[CAS 2851-52-7],n = 7[CAS 13827-30-0],n = 8[CAS 14514-98-8]のクロロシクロポリホスファゼンが単離確認されている.【】鎖状ポリホスファゼン:(n ≦ 15000)(X = ハロゲン原子).分子量は2×106 程度.[CAS 25034-79-1]はClを-OR,-OAr,-NR2,-N(H)R基に置換した300種類以上の高分子化合物の親物質で,(PCl2=N)3 の加熱による開環重合で合成される.BCl3触媒として重合反応を促進する.分子量が 106 程度のものは無色のゴム状弾性をもつ固体,低いものは油状液体.ベンゼン,トルエンなどの有機溶媒に可溶.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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