改訂新版 世界大百科事典 「バートリ」の意味・わかりやすい解説
バートリ
Báthory Erzsébet
生没年:1560-1614
ハンガリーの貴族で,〈血の伯爵夫人〉の異名をとる大量少女虐殺者。正しくはバートリ・エルジェーベト。トランシルバニアの名門貴族バートリ家に近親結婚の末裔として生まれ,居城チェイテ城内に領地の娘たちを呼び込んでは次々に惨殺し,その数は少なくとも50人(一説に600人以上)にのぼったと伝えられる。ときには咽喉を食い破って生血を飲み,はては生体からほとばしる血のシャワーを浴びたという。1610年悪事は露見するところとなり,裁判の結果監禁死を遂げた。彼女の吸血癖は,美貌の衰えを防ぐため血の美容効果を信じた極端なナルシシズムと,同性愛的傾向の結合から生まれたと考えられよう。その所業は,しばしば吸血鬼ドラキュラのモデルとされるブラド串刺し公や,フランスのジル・ド・レのそれに比せられる。
執筆者:種村 季弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報