ヒダリマキマイマイ(その他表記)Enhadra quaesita

改訂新版 世界大百科事典 「ヒダリマキマイマイ」の意味・わかりやすい解説

ヒダリマキマイマイ (左巻蝸牛)
Enhadra quaesita

名のように殻が左巻きのオナジマイマイ科の巻貝。殻は高さ3cm,幅4.5cmの大型のカタツムリ。約5回半巻き,殻の表面は平地にすむのは黄色でまわりに黒い帯があり,また下側のへそ穴のところも黒い。しかし,山地にすむのは黒褐色でまわりの黒い色帯の上下にも幅の広い色帯ができる。この型をチャイロヒダリマキマイマイE.q.montium,舳倉(へくら)島にすむ小さい個体はヘクラマイマイE.q.heguraensisという。伊豆諸島の個体も小さくてこの型に似ている。成体になると殻口が少し反り返って広がり黒褐色になる。軟体は殻からのび出る部分は黒褐色の雲状の斑紋がある。軟体の構造は右巻きのカタツムリ(ミスジマイマイなど)とまったく左右反対になっている。中部,関東,東北地方に分布し,主として地上にすみ,木にはあまり高く登らない。腐葉や若芽を食べるが,飼育にはキュウリニンジンサツマイモなどでよい。このほか,小型で樹上生のオオタキマイマイE.grataが日本海側新潟から秋田に分布する。褐色が強いミヤマヒダリマキマイマイE.scaevolaが関東山地より伊吹・鈴鹿山地まで分布する。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒダリマキマイマイ」の意味・わかりやすい解説

ヒダリマキマイマイ
Euhadra quaesita

軟体動物門腹足綱オナジマイマイ科。陸産貝。殻高 3cm,殻径 4.5cm。殻は大きく,左巻き。螺管は太く丸く,螺層は 5.5階。殻表は黄緑色で,周縁に細い黒色帯がある。この黒色帯の上下に広い黒褐色帯ができるが,色帯を欠き全体が褐色を帯びることもある。臍孔は深く,黒い。濃色型は山地に,淡色型は平地に多い。軟体は黒褐色で淡色の雲状模様がある。関東地方を中心に東北・北陸地方,伊豆七島などに分布する。石川県輪島市舳倉島 (へぐらじま) に分布するものは小型で堅く,ヘグラマイマイ E.quaesita heguraensisと呼ばれる。初夏,落ち葉の下に穴を掘って真珠の粒のような卵を産む。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒダリマキマイマイ」の意味・わかりやすい解説

ヒダリマキマイマイ
ひだりまきまいまい / 左巻蝸牛
[学] Euhadra quesita

軟体動物門腹足綱オナジマイマイ科のカタツムリ。多くのマイマイ類が右巻きであるのに、本種は左巻きの殻をもつ。殻高30ミリメートル、殻径45ミリメートルぐらいになる比較的大形のカタツムリで、螺管(らかん)は太く、成長脈は粗く、黄褐色の殻皮をかぶっている。周縁よりやや上部に1本の褐色帯があり、殻底の臍孔(へそあな)の周りも褐色。関東地方、中部地方の平野にごく普通に分布する。山地型は色も黒ずみ、色帯が多く、また火炎状模様もある。これをチャイロヒダリマキマイマイE. q. montiumという別亜種にする。

[奥谷喬司]

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世界大百科事典(旧版)内のヒダリマキマイマイの言及

【カタツムリ(蝸牛)】より

オナジマイマイ(イラスト)やウスカワマイマイ(イラスト)は全国に広く分布するが,都市や農耕地に多い。エゾマイマイ,サッポロマイマイは北海道,ムツヒダリマキマイマイ,オオタキマイマイは東北地方,ミスジマイマイ(イラスト),ヒダリマキマイマイは関東地方,クロイワマイマイは中部山地,ニシキマイマイやクチベニマイマイは近畿地方,セトウチマイマイ,サンインマイマイは中国地方,アワマイマイ,セトウチマイマイは四国地方,ツクシマイマイは九州地方,シュリマイマイは沖縄地方の代表的な種である。ヨーロッパでは食用カタツムリのエスカルゴが名高い。…

※「ヒダリマキマイマイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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