ヒトアジュバント病(読み)ひとあじゅばんとびょう

家庭医学館 「ヒトアジュバント病」の解説

ひとあじゅばんとびょう【ヒトアジュバント病】

 豊胸術(ほうきょうじゅつ)、鼻形成術(びけいせいじゅつ)(隆鼻術(りゅうびじゅつ))などの美容整形または形成術のときに注入されたシリコンなどの異物が原因でおこる病気と考えられています。
 いろいろな膠原病(こうげんびょう)(免疫のしくみとはたらきの「膠原病について」)に似た症状がみられ、これらを一括してアジュバント病と呼んでいます。
 現われる症状から、膠原病に相当する病名をあてはめてみますと、もっとも多くみられるのは強皮症(きょうひしょう)(「強皮症(全身性硬化症)」)で、ついで全身性エリテマトーデス(「全身性エリテマトーデス(SLE/紅斑性狼瘡)」)、関節リウマチ(「関節リウマチ」)などです。
 症状は、膠原病のそれぞれの症状とはっきりした区別がつきません。それぞれの病気の項目を参照してください。ただ、強皮症と診断されるような場合でも、アジュバント病の肺線維症(はいせんいしょう)や腎臓障害(じんぞうしょうがい)などの内臓病変は、本来の強皮症と比べ軽いといわれています。
 血液検査をすると、膠原病の各病気と同様に、抗核抗体(こうかくこうたい)(自分の細胞の核を異物とみなして攻撃する抗体)などの自己抗体(じここうたい)が見つかります。
●治療
 治療は、原因と考えられる異物を除くことによって症状が改善しますので、手術して異物を取り除くのが原則です。
 ただ、それだけではよくならないこともあるため、そうした例には、それぞれの病気(膠原病)の治療に準じた治療が行なわれます。一般的には、関節炎などの炎症には、非ステロイド抗炎症薬や、ときにはステロイド(副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン)薬が使われます。
 重いレイノー現象(全身の皮膚が蒼白(そうはく)から青くなり、さらに赤くなる現象で、一時的に血流がとだえて生じる)は、血管拡張薬などで治療します。
 肺線維症(間質性肺炎(かんしつせいはいえん)(「間質性肺炎とは」))や腎臓の障害によって高血圧などがひきおこされた場合は、免疫抑制薬や強力な降圧薬などで治療します。
 経過は、本来の膠原病に比べればよいようです。

出典 小学館家庭医学館について 情報

六訂版 家庭医学大全科 「ヒトアジュバント病」の解説

ヒトアジュバント病
(膠原病と原因不明の全身疾患)

 異物を挿入する美容形成手術後に、膠原病(こうげんびょう)あるいはそれに類似した症状を示す病気のことです。ほとんどはシリコンやパラフィンを直接注入する豊胸術の実施から10年以上たって、発症します。バッグに密封したシリコンを挿入する方式に変更されて以降、本症の発症はほとんどなく、新たに診断される患者数は減っています。

 強皮症(きょうひしょう)全身性(ぜんしんせい)エリテマトーデス関節(かんせつ)リウマチと区別のつかない場合もありますが、多くは関節炎(かんせつえん)、筋肉痛、紅斑(こうはん)発熱、炎症反応の上昇があるにもかかわらず、膠原病としては非典型的な症状を示します。

 治療は異物除去を優先しますが、それのみで治癒することはまれです。異物が体内に分散して完全に取り除くことができない場合も多く、多くの例で副腎皮質(ふくじんひしつ)ステロイド薬(プレドニン)による治療が必要になります。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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