改訂新版 世界大百科事典 「ヒメマルカツオブシムシ」の意味・わかりやすい解説
ヒメマルカツオブシムシ
varied carpet beetle
Anthrenus verbasci
甲虫目カツオブシムシ科の昆虫。成虫の体は黒色で,黄色,褐色,白色の鱗毛が斑紋状に散在する。体長2.5mm内外。世界各地に分布し,羊毛,生糸などの繊維のほか,乾いた動物質のものを食べ荒らす大害虫。標本や剝製もしばしば被害を受ける。幼虫で越冬し,4月ころ蛹化(ようか),5月ころ成虫となる。さなぎの期間は約2週間。幼虫は5~8回の脱皮で蛹化するが,環境によっては10回以上も脱皮する。羽化後,約10日間くらいで交尾と産卵が終わるが,この期間までは光から逃れようとする性質(負の走光性)をもつ。産卵後は光に向かう性質(正の走光性)となり,花に飛来し花粉やみつを食するが,引き続き産卵能力をもつ個体もいる。気温が15℃以上で,明るさが1万lx以上にならないと訪花しない。雌はなにも食べなくても平均40個の卵を産むといわれる。1年1世代。幼虫は体の後方の左右に筆先のような毛の束を有し,敵が近づくとこれを扇のように開く。毛には有刺鉄線のようにとげがあり,他の昆虫が触れると,毛が抜けて昆虫の体にからみつくことが知られている。
執筆者:林 長閑
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報