研究,教育,装飾などに役だてるため,動物の皮をはぎ,中身を取り去って作った乾燥標本。ふつう,毛や羽のある哺乳類と鳥類で作られるが,大型の爬虫類や両生類,魚類,甲殻類などでも作られることがある。仮剝製と本剝製の2種類がある。
研究用標本で,どこででも簡単に製作でき,収納,観察に便利であるが,姿が自然でないので展示には適さない。もっぱら小型の哺乳類と鳥類で作られる。外部の計測をした後,ふつう,腹面の正中線を切開して皮をはぎ,鳥類の場合は頭骨と四肢の骨,哺乳類の場合は後者だけ残して中身を取り去り,皮の裏面に脱毛を防ぐため焼きミョウバンなどを塗り,中に綿,麻などで作った頭と胴の芯と,針金に綿を巻いた尾の芯を入れてから,切開した部分を糸で縫い合わせ,収納に便利な,腹ばいまたはあおむけに寝た姿勢に整えた後,陰干しにして仕上げる。哺乳類の場合,頭骨は別に標本とする。十分に乾燥した仮剝製標本は,二硫化炭素で薫蒸した後,光線の入らない標本たんすに入れて保管する。
仮剝製とほぼ同様に剝皮した後,ミョウバンでなめした皮を,針金などを入れてがんじょうに作った芯にかぶせ,切開した部分を縫い合わせ,目にガラス製の義眼を入れた後,台に取りつけて乾燥させる。昔の本剝製は,袋状にはいだ皮の中に綿などを詰め込んだ縫いぐるみに近いものであったが,近年では,粘土で塑像を作る要領で精密な芯の雄型を作り,それを基にしてグラスファイバーなどで軽くてじょうぶな張子の芯を作り,それに薄くそいだ皮をかぶせ,筋肉や血管の膨らみなどをも表した精巧なものが多くなった。本剝製標本は博物館,学校などで教育用に展示されることが多いので,科学的に正確で,かつ,生きたときの姿態に近く作り上げなければならない。そのためには彫塑家にも劣らない高度の技術が必要だが,日本では剝製技術taxidermyの重要性についての認識が乏しく,遺憾ながら技術家はまだ欧米諸国ほど高く評価されるに至っていない。
執筆者:今泉 吉典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新