剝製(読み)ハクセイ

デジタル大辞泉 「剝製」の意味・読み・例文・類語

はく‐せい【剝製】

鳥獣の肉や内臓を取り除き綿・麻などを詰めて、防虫・防腐処理をし、生きているときの外形を保つように作ること。また、そのもの。
[補説]骨・内臓などを取って表皮だけにしたものに人造の骨・眼球などを入れて生きているときの姿にした展示・鑑賞用のものを「本剝製」という。また、骨・内臓などを取って表皮だけにし、死んだときの形を保つようにして研究用に保存したものを「仮剝製」という。
[類語]標本

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「剝製」の意味・わかりやすい解説

剝製 (はくせい)

研究,教育,装飾などに役だてるため,動物の皮をはぎ,中身を取り去って作った乾燥標本。ふつう,毛や羽のある哺乳類と鳥類で作られるが,大型の爬虫類両生類魚類甲殻類などでも作られることがある。仮剝製と本剝製の2種類がある。

研究用標本で,どこででも簡単に製作でき,収納,観察に便利であるが,姿が自然でないので展示には適さない。もっぱら小型の哺乳類と鳥類で作られる。外部の計測をした後,ふつう,腹面の正中線を切開して皮をはぎ,鳥類の場合は頭骨と四肢の骨,哺乳類の場合は後者だけ残して中身を取り去り,皮の裏面に脱毛を防ぐため焼きミョウバンなどを塗り,中に綿,麻などで作った頭と胴の芯と,針金に綿を巻いた尾の芯を入れてから,切開した部分を糸で縫い合わせ,収納に便利な,腹ばいまたはあおむけに寝た姿勢に整えた後,陰干しにして仕上げる。哺乳類の場合,頭骨は別に標本とする。十分に乾燥した仮剝製標本は,二硫化炭素で薫蒸した後,光線の入らない標本たんすに入れて保管する。

仮剝製とほぼ同様に剝皮した後,ミョウバンでなめした皮を,針金などを入れてがんじょうに作った芯にかぶせ,切開した部分を縫い合わせ,目にガラス製の義眼を入れた後,台に取りつけて乾燥させる。昔の本剝製は,袋状にはいだ皮の中に綿などを詰め込んだ縫いぐるみに近いものであったが,近年では,粘土塑像を作る要領で精密な芯の雄型を作り,それを基にしてグラスファイバーなどで軽くてじょうぶな張子の芯を作り,それに薄くそいだ皮をかぶせ,筋肉や血管の膨らみなどをも表した精巧なものが多くなった。本剝製標本は博物館,学校などで教育用に展示されることが多いので,科学的に正確で,かつ,生きたときの姿態近く作り上げなければならない。そのためには彫塑家にも劣らない高度の技術が必要だが,日本では剝製技術taxidermyの重要性についての認識が乏しく,遺憾ながら技術家はまだ欧米諸国ほど高く評価されるに至っていない。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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