日本大百科全書(ニッポニカ) 「ひょうそ」の意味・わかりやすい解説
ひょうそ
ひょうそ / 瘭疽
手足の指におこる化膿(かのう)性炎症で、指先の小さな傷から、おもにブドウ球菌などの化膿菌が感染しておこる。指が赤く腫(は)れて痛み、リンパ節も腫れる。炎症が皮膚だけにとどまるときは、まもなく中央に黄色い膿疱(のうほう)をつくり痛みが和らぐが、解剖学的関係から病変は深部組織に進みやすく、皮下組織、腱(けん)、骨、関節に及ぶと、発熱や悪寒を伴い脈を打つような激しい痛みがあり、指が動かせなくなる(皮下瘭疽、骨(こつ)瘭疽、関節瘭疽)。爪(つめ)の下にできると最初から痛みが強く、やがて爪の上から膿(うみ)が透けてみえるようになる(爪下(そうか)瘭疽)。爪の生え際のものは、爪の周囲が赤く腫れて、爪と皮膚の間から膿が出る(爪囲炎)。足の指の瘭疽では、ハイヒールや先の狭い靴の慢性刺激が原因となり、慢性に再発することがある。治療は安静にし、抗生物質の内服、抗菌剤軟膏(なんこう)の外用、湿布などを行うが、切開や抜爪(ばっそう)を必要とすることもある。
[野波英一郎]