ひょうそ(読み)ひょうそ(ひょうそ)(その他表記)Felon

六訂版 家庭医学大全科 「ひょうそ」の解説

ひょうそ(瘭疽)
ひょうそ(ひょうそ)
Felon
(皮膚の病気)

どんな病気か

 手指あるいは足趾(そくし)(足の指)に細菌が感染して起こる病気(指趾末節の蜂窩織炎(ほうかしきえん))です。

 爪の周囲に小さい傷があったり指しゃぶりで指がいつも湿った状態になりやすい乳幼児、水仕事の機会の多い女性や調理人など、手荒れが起こりやすい人に多くみられます。

原因は何か

 手荒れやかぶれのある指、足趾では爪切りの際の傷や爪が皮膚にくい込んでいるところに、黄色ブドウ球菌連鎖球菌などが感染して起こります。

症状の現れ方

 手指あるいは足趾の爪のまわりから末節部が、赤くはれてズキンズキンとした激しい痛みがあります(図50)。炎症が浅い場合は爪のまわりに膿疱(のうほう)ができ、深い場合には関節や骨が侵されて指趾を曲げることもできなくなります。また、爪が取れてしまったり、腕や下腿のリンパ管に沿って炎症が広がり、赤い帯状のリンパ管炎を伴うこともあります。

 手荒れやかぶれのある手指の爪の生え際に感染が起こると、爪のまわりが赤くはれて痛くなり、爪の周囲からうみが出る場合があります(爪囲炎(そういえん))。これが進行して、ひょうそとなることもあります。

検査と診断

 ひょうそと爪囲炎は、必ずしも区別ができないこともあります。細菌培養を必ず行います。慢性に経過し症状の軽い場合は、カンジダ性爪囲炎や白癬性(はくせんせい)爪囲炎を疑ってカビの検査も行います。

 ヘルペス性ひょうそ(単純性疱疹(たんじゅんせいほうしん)指先に生じたもの)では、水疱内からウイルスに感染した特徴的な巨細胞が検出され細菌性と区別できます。

 湿疹性爪囲炎では、他の指や手のひら・甲にも湿疹がみられ、爪周囲のはれや痛みはほとんどなく、かゆみを伴います。

 乾癬(かんせん)による爪囲炎は、他の部位に乾癬による病変がみられることが多く、爪に点状のくぼみが認められます。

治療の方法

 原因細菌が主に黄色ブドウ球菌なので、この菌に効果のある抗菌薬を内服し、痛みがとくに強い時は痛み止めを併用します。局所赤み・はれ・痛みが強い場合は、冷湿布をして安静にします。表面からうみが見えている場合は、皮膚を切開してたまっているうみを出すと、痛みは弱まり早く治ります。

多田 讓治


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ひょうそ」の意味・わかりやすい解説

ひょうそ
ひょうそ / 瘭疽

手足の指におこる化膿(かのう)性炎症で、指先の小さな傷から、おもにブドウ球菌などの化膿菌が感染しておこる。指が赤く腫(は)れて痛み、リンパ節も腫れる。炎症が皮膚だけにとどまるときは、まもなく中央に黄色い膿疱(のうほう)をつくり痛みが和らぐが、解剖学的関係から病変は深部組織に進みやすく、皮下組織、腱(けん)、骨、関節に及ぶと、発熱や悪寒を伴い脈を打つような激しい痛みがあり、指が動かせなくなる(皮下瘭疽、骨(こつ)瘭疽、関節瘭疽)。爪(つめ)の下にできると最初から痛みが強く、やがて爪の上から膿(うみ)が透けてみえるようになる(爪下(そうか)瘭疽)。爪の生え際のものは、爪の周囲が赤く腫れて、爪と皮膚の間から膿が出る(爪囲炎)。足の指の瘭疽では、ハイヒールや先の狭い靴の慢性刺激が原因となり、慢性に再発することがある。治療は安静にし、抗生物質の内服、抗菌剤軟膏(なんこう)の外用、湿布などを行うが、切開や抜爪(ばっそう)を必要とすることもある。

[野波英一郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

普及版 字通 「ひょうそ」の読み・字形・画数・意味

【氷】ひようそ

冷凍野菜。宋・陸游〔十一月上七日、騾嶺の小店に飯す〕詩 冰、競うて槃(ばん)に登る 瓦鉢氈巾(せんきん)、(とも)に俗ならず

字通「氷」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

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