改訂新版 世界大百科事典 「ビーンランド伝説」の意味・わかりやすい解説
ビーンランド伝説 (ビーンランドでんせつ)
アイスランドのサガによれば,グリーンランド植民者である赤毛のエイリークの息子レイブらは,グリーンランドの西方に一連の土地を発見した。地理的描写からみると,これらが北アメリカ大陸東岸であると考えられる。そのうち最南部の島ではブドウが自生し,川にはサケがいたとされ,やがて植民が試みられたが失敗した。この島はビーンランドVínlandと呼ばれ,ビーンはブドウのこととされている。新たな土地を求める北欧人にとって,南方のシンボルであるブドウと,彼らの故国の美味であるサケの共存は理想郷である。
この伝承は中世を通じて受け継がれ,コロンブスも北回りインド航海を考えたことがある。1962年以来ノルウェーの探検家ヘルゲ・インスタ夫妻は,ニューファンドランド島北東部にバイキング時代の北欧様式建造物群跡を発見,ビーンランド植民の跡とみなされている。しかしここにはブドウが自生せず,牧草地があるので,ビーンはブドウではなく,古北欧語の草地ビンvinだったのではないかと考えられている。
執筆者:熊野 聰
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報