ファウンドリ(読み)ふぁうんどり(その他表記)foundry

翻訳|foundry

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ファウンドリ」の意味・わかりやすい解説

ファウンドリ
ふぁうんどり
foundry

顧客からの設計データに基づき、半導体集積回路マイクロチップ)を受託生産する専門企業。半導体を受託生産するビジネスモデルをさす場合もある。似た概念として、工場をもたず半導体の企画・開発に専念するファブレスのほか、通信機器、家電、自動車メーカーなどから生産を受託し、つくった半導体を相手先ブランドでOEM供給するビジネスモデルもある。もともとファウンドリは英語で鋳物工場を意味し、鋳物のように半導体チップを受託生産することから、こうよばれるようになった。当初、半導体は自社生産が主流であったが、1990年代以降、集積回路の微細化が進み、半導体製造にはクリーンルーム、製造設備、技術開発に巨額投資がかかるようになった。半導体ライフサイクルの短縮もあって、企画・設計に特化するファブレスが相次いで生まれ、この生産を受託するファウンドリが業績不振の半導体工場を吸収しながら、IT(情報技術)ブームを受けて急成長した。2000年以降、企画・設計に注力するファブレスと、受託生産専業のファウンドリの国際水平分業が進んだ。

 台湾の調査会社トレンドフォースの調査(2020年12月時点)によると、2020年のファウンドリ市場は約9兆0300億円で、世界の半導体市場(約47兆円)のおよそ5分の1を占める。ファウンドリ大手には台湾の台湾積体電路製造(TSMC)や聯華電子(UMC)、韓国のサムスン電子、中国の中芯国際集成電路製造(SMIC)があり、世界市場の8割強が東アジアに偏在している。黎明(れいめい)期にファウンドリは大手半導体企業の下請的性格が濃かったが、生産能力の増大や先端技術の蓄積で、安全保障上も重視されるようになった。日本では2006年(平成18)ごろ、日立製作所東芝、ルネサステクノロジが日の丸ファウンドリをつくる構想があったが実現しなかった。なおファウンドリに対し、自社工場をもつ半導体企業をIDM(Integrated Device Manufacturer)とよぶ。

[矢野 武 2021年7月16日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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